研究課題
プログラムされた細胞死(Programmed Cell Death, PCD)は、固体の生命維持のために遺伝子によって制御された細胞死である。従来、細胞死は「PCDとしてのカスパーゼ依存性apoptosis」と「受動的な死=necrosis」に分類されていたが、最近necroptosis、autophagic cell death、paraptosisなど多様なPCD様式が明らかになり、それらを利用するがん治療の可能性が指摘されている。申請者らは、イリジウム(IrIII))錯体と塩基性のKKKGGペプチドのハイブリッド化合物(IPH)ががん細胞のparatosisを誘導することを見出し、その作用機序の解明を目的として本研究を開始した。従来はC3対称性のIr錯体に3分子のKKKGGペプチドを導入していたため、本年度は、KKKGGペプチドの数が2つ、1つである誘導体を合成し、ペプチド数(それに伴う正電荷)と抗がん活性の間に良い相関があることを確認した。次に、paraptosisを誘導すると報告されているcelastrolとの作用機序を比較し、これらが異なる細胞内シグナル伝達経路を経由してがん細胞のparaptosisを誘導することが強く示唆された。そして、i) IPHはカルモジュリンまたはカルモジュリンのCa2+錯体に結合すること、ii) IPHは最初に細胞膜へ移行し、その後ミトコンドリアへ移行すること、iii) IPHはリソソームと小胞体の液胞化を誘導するが、celastrolはリソソームの液胞化を誘導すること、iv) IPHが小胞体からミトコンドリアへのCa2+輸送を促進し、ミトコンドリア膜電位を低下させること、それに対してcelastrolは細胞質内のCa2+濃度を上昇させるが、ミトコンドリア内のCa2+濃度とミトコンドリア膜電位には影響しないこと、などが明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
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