脳は視聴覚を代表とする感覚器を通して外界の入力(外因性情報)を受け取り、脳内部における神経ネットワークに由来する信号(内因性情報)と統合した情報処理を行うことで合目的な行動を行っている。従来の研究において、多くの場合このような外因性の信号と内因性の信号は個別の研究対象とされてきたが、ヒトの日常生活を司る脳機能を理解するためにはこれらの情報がどのように連関するかを理解することが重要である。この目的のため、本研究ではヒト被験者について動画視聴と様々な認知タスクを同時に行ってもらい、課題遂行中の脳活動についてfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて全脳計測した。計測された脳活動について、外界由来の情報および感覚領野と各種脳内ネットワークとの機能的相関を個別に計算し、これらが認知タスクに依存して変化する様子を定量的に解析した。その結果、外因性の視聴覚情報に注意を行っている状態に比べ、内的注意を伴う認知タスク遂行下においては外因性情報の再現性および感覚領野と脳内ネットワークの機能的相関がともに減少していた。これらの結果は、外因性・内因性情報の動的なインタラクションが認知状態に依存して変化すること、およびそれらを実験体・定量的に評価可能であることを示唆する。 本研究は、外国人特別研究員Dror Cohen氏と受け入れ研究者である西本の2名で実験・解析系の考案を行った。fMRIを用いたヒト脳活動計測実験、心理実験及び解析は主にDror Cohen氏が行い、2名によりその結果等について議論と考察を行った。また本件及び関連する技術開発について、2019年度は1件の論文発表および1件の学会発表を行った。
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