研究課題/領域番号 |
18F18709
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 潤一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (60218576)
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研究分担者 |
GAO XIANGPENG 九州大学, 先導物質化学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-10-12 – 2020-03-31
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キーワード | 微細藻類 / 脂質 / 水熱炭化 / バイオオイル / 炭素材 / コークス / 熱間成型・炭化 / バインダー |
研究実績の概要 |
本研究は、微細藻類(MG)からの液体燃料・炭素材併産の実現に有効と期待される水熱炭化プロセスの開発を目標とする研究である。昨年8月から本年3月末までに得られた主要成果を以下に述べる。 (1)二種のMG(Spirulina and Chlorella)の物性解析:MGのプロセッシング技術を開発するにあたって、熱化学物性は不可欠の基礎物性値である。初期検討においてASTM法によっては水分・揮発成分・固定炭素・灰分含有率の全てを定量できないことがわかった。灰化が困難である問題を解決する決定する手段として950℃熱分解、600℃空気燃焼灰化、さらに過酸化水素蒸気添加・600℃灰化の新工程を試し、高精度含有率決定が可能になった。(2)MG水熱炭化法と生成物分布定量法を確立した。固体産物(ハイドロチャー;HC)収率の従来決定法を検証し、HCが液産物(バイオオイル;BO)を保持したまま回収、定量されることを見出した。回収HCの溶剤抽出によってBOおよびBOフリーHCを再現よく定量できること、既往研究の殆どはHC収率を過大評価していることを示した。(3)既往の研究は全て回分式の水熱炭化法を採用したのに対し、本研究は熱水中のMG転換機構解明とプロセス開発の双方に有効なパーコレーション(PC)式水熱炭化法を提案し、実験を実施した。その結果、熱水の温度によらずPC式は従来法よりも高抽出成分収率、低HC収率を実現することを示した。(4)HC(脂質=主プロダクト取出後)の熱間成型・炭化によるコークス化を検討し、HCは単味でも6-8 MPaの引張強度を持つコークスに転換できたが、褐炭とのブレンド(HC; 10%)から20 MPaを超える強度のコークスを製造できた。(5)HC熱分解・炭化で発生する重質油の活用法として、重質油を多孔性のHCチャーに保持可能かどうかを検証し、可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に述べた(3および(4)の成果の一部(褐炭とHCとのブレンドのコークス化)および(5)の成果は、ケンキュを進捗させる過程で着想し、即実験的に検討、検証して得られたものであり、当初想定を超えたものである。これを理由として現在の進捗状況を自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間終了までの 5ヶ月間は、研究の完了と成果をまとめた論文の作成、投稿が最重要であるが、研究の新規性とMG利用研究のコミュニティへの寄与をさらに高めるため、以下を重点とする試験研究を展開する。 (1)回分式及びパーコレーション式水熱炭化におけるMGからの成分抽出・炭化特性を比較し、成分抽出・炭化の機構・速度論を明らかにするとともに、パーコレーション式の優位性を示し、これらの成果を論文にまとめ、投稿する。 (2)HC熱間成型・炭化によるコークス製造において、発生不可避の重質油を原料であるHCに吸収保持させてリサイクルするプロセス手法を開発する。これにより、利用価値の低い重質油フリーの炭化プロセスが実現する(バイオマス由来炭素材、リグニンモノマーに関心がある研究者へのインパクト大) (3)新発見したHCのコークスバインダーとしての機能を詳細に明らかにし、褐炭等の低品位炭とのブレンドによる高強度コークス製造を示す(鉄鋼産業へのインパク大) (4)水熱炭化の隠れた効用である金属種の固体=HCからの除去特性を明らかにし、HCが高品位炭素材、コークスの原料として価値が高いことを示す。
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