研究課題/領域番号 |
18F18714
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
松本 明善 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50354303)
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研究分担者 |
PATEL DIPAKKUMAR 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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キーワード | 超伝導 / 超伝導接合 / 臨界電流密度 / 磁場減衰 / 微細組織観察 |
研究実績の概要 |
二ホウ化マグネシウム(MgB2)は2001年に日本で超伝導特性が発見された物質である。現在、いくつかの会社が1kmを越えるような線材を作製し、販売するに至っている。しかしながら、実際の超伝導マグネットや送電線として利用するためには全長で数十km級の線材が必要となる。そのような中、線材同士の超伝導接続技術は実用化のためには欠かすことの出来ない技術である。超伝導接続では超伝導線材の中の超伝導体同士において超伝導電流経路を形成する必要があり、接合界面付近は不純物や欠陥が多く存在し、電流阻害要因となっている。本研究では簡易的且つ再現性の高い超伝導接続技術開発、材料科学的に重要な界面間に超伝導電流経路を確保するためのナノスケールの組織制御による超伝導接続技術の確立、さらに種々の温度域、磁場環境下での評価技術の確立を目指す事を目的とする。 本年度は種々のMgB2線材において接続治具、評価装置の開発及び一度熱処理を行った試料に際して、再度熱処理を行った際の劣化挙動について調査を行った。その結果、良好な接続治具及び評価装置の作製に成功した。 一方、再熱処理の線材において特性が上昇するという新たな知見を得ることが出来た。超伝導接合を行う線材は一度製品になっている場合、熱処理が行われている。その後、超伝導接合を行うための処置を行った後、再度熱処理を行う必要がある。その際に劣化が生じた場合、接合による劣化なのか熱処理による劣化なのかを確認する必要がある。このため本年度は熱処理材の再熱処理を行うことによって劣化程度を確認することを行った。その結果、当初想定に反して、2度目の熱処理によって特性が向上する線材が出てきた。そのメカニズムについては現在確認中で有り、来年度の新たな課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度では下記のような計画を立てていた。 内部マグネシウム拡散法によって作製したMgB2線材同士の接続を試みる。接続部を含んだMgB2線材の評価については、物質・材料研究機構における共通マグネット装置群等を利用し、臨界電流密度特性の評価、および当グループ保有の走査電子顕微鏡等による微細構造観察を行う。また、磁場中における磁場減衰法による超低抵抗測定については東北大学強磁場センターにあるマグネット等も必要に応じて利用する予定である。 しかしながら、昨年度は種々のMgB2線材において接続治具、評価装置の開発及び一度熱処理を行った試料に際して、再度熱処理を行った際の劣化挙動について調査を行った。その結果、接続治具の設計及び製作において良好な接続部治具の作製に成功した。一方で、市販線材の再熱処理の線材において特性が上昇するという新たな知見を得ることが出来た。2度熱処理による興味深い結果が得られたため、当初予定していた接続部の作製及び評価まで進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度作製した治具及び評価装置を使ったMgB2線材同士の超伝導接続方法の開発を引き続き行うとともに昨年度において新たに得られてた知見である2度熱処理による特性向上のメカニズムの解明も行う。 超伝導線材同士の接続に関しては開発した接続方法についてより広範な線材への適用性を検討する。熱処済線材における超伝導接続は困難且つ挑戦的な課題で有り、すでに販売が開始されている市販線材への適用について引き続き検討を行う。特に市販線材においては1つの線材の中に多数のフィラメントが埋め込まれた形状をしており、それらのフィラメント同士を接続する手法を開発する。 得られた超伝導接続部を含む評価に関しては種々の温度磁場中での臨界電流測定及び磁場減衰測定を行う。また、2度熱処理による特性改善等も含めてそのメカニズム解明のため、組織観察を行っていく。得られた知見は論文及び国内、国際会議等での発表を行っていく。
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