研究課題/領域番号 |
18F18719
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
|
研究分担者 |
CLEMENT JEAN-EMMANUEL 北海道大学, 電子科学研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
|
キーワード | 圧縮センシング / 1細胞ラマン分光 / 次元縮約 |
研究実績の概要 |
当該年度は次の二課題(1)ラマンハイパースペクトルイメージングの圧縮センシングアルゴリズムによるラマン計測迅速化技術の開発、(2)スパース主成分解析等のデータ解析手法に基づくミトコンドリアネットワークと脂質滴の関係に関するデータ解析、について研究を展開した。(1)共同研究をしている大阪大学藤田克昌教授が開発しているプログラマブル照明型ラマン分光イメージングで獲得した実験的信号は背景光によるノイズが大きいため、現行の圧縮センシング理論の要件を満たしていないことを明らかにした。そのため、デジタルミラーデバイスに基づいた背景光を効率的に除去する新しい顕微鏡を開発する契機となった。この新たなデジタルミラーデバイスによるon-the-flyラマン分光装置による準備段階での画像を解析したところ、背景光を除去することができて、現在、圧縮センシングの適用を検討している。(2)走査型ラマン分光イメージングによって得られた、生きた癌細胞株(乳房および甲状腺)について真核細胞の主要な構成要素の2つであるミトコンドリアと脂質滴の分割に「スパース主成分分析」を適用したところ、空間的ミトコンドリアのサイズが癌の悪性度とともに減少すること、ミトコンドリアネットワークには脂肪滴が近接するものとそうでない二パターンに大別されること、PCA、tSNE、UMAPなどの次元縮約技術により、ミトコンドリアの生化学も悪性度によって変化する可能性が高いことを新たに見いだすことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧縮センシングに関しては、令和元年度中に最初の画像再構築を行うという当初の計画だったが、予定より遅れている。 その遅れの理由は理論開発側ではなく、装置上の問題が大きく、デジタルミラーデバイスに基づいた新しい圧縮センシング顕微鏡の開発が進んだことは重視している。癌診断のためのラマンデータ分析に関しては、ラマン顕微鏡が癌研究において有望な技術であることの証明となるような結果が出たこともあり、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は転移細胞と良性細胞の違いをより理解する目的で、ラマンイメージングデータの分析を行う。ラマン単一細胞の低次元マップにより、少なくとも4つの生化学的クラスター(核、膜、ミトコンドリア、脂質滴)があることが示唆されている。ラマン単一細胞の低次元マップにより明らかになる事象の探索、およびその定量化を行うために、パーシステントホモロジーなどの位相データ分析ツールを使用する。生化学的クラスターのマッピング方法は、悪性度に依存すると考えている。PCA、tSNE、UMAPなどの異なる次元縮約法で得られた低次元マップで定量化し、ディープラーニング分野で用いられているツールを使用する。変分型オートエンコーダーと敵対的生成ネットワークは、ラマン単一細胞の低次元モデルを得る上で有用であると考えられる。
|