研究課題/領域番号 |
18F18724
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
峯松 信明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90273333)
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研究分担者 |
GUEVARA RUKOZ ADRIANA 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 外国語学習 / CALL / HVPT / 音声分析合成技術 / 音韻知覚 / 音響歪み・雑音 |
研究実績の概要 |
外国語学習者の聴き取りの頑健性を向上させることを目指す。母語話者には問題とならない音響的変動(雑音や歪み)が,非母語話者の聴き取りを大きく妨げることが頻繁に起きる。申請者らは High Variety Phonetic Training(HVPT)と呼ばれる,一つの音声素材に様々な音響変動を施した後に聴き取り訓練を行なう手法を,音声変形技術を使って自動化,効率化することに成功している。本研究では,様々な変形が技術的に可能となった Technically-Enhanced HVPT(TE-HVPT) を用いて,1) どのような音響変形を施すことが効果的なのか,2) どのような聴き取りタスクを課すことが効果的なのか,など,TE-HVPT を外国語音声学習において実践的に使うことを前提に,様々な教育的検討を行なう。 ポスドクのGUEVARA RUKOZ ADRIANA 氏は昨年11月末に来日し,下記の作業を行なった。2年間の研究活動において必要となるlaptop(主として音声分析,データ解析や文書作成)などの機器を購入し,研究環境を整えた。峯松研究室で行われてきた TE-HVPT 研究について学び,音声変形プログラムの理解,他研究機関の研究動向の把握,また,外国語教育専門家(実践家)との議論を通して,次年度4月からのデータ収集計画を練った。特に「教育的に求められる音声変形とは何か」「学習者が外国語を利用する現場が求める音声変形とは何か」という着眼点から,議論を重ねた。3月から学内にて予備的なデータ収集を開始した。これは,人工的に作られた音響的多様性がどの程度効果的なのかを実験的に検証するためのデータ収集である。なお,これらの準備に必要な音声変形作業そのものは現有設備を用いて行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11月末に来日し,2年間の研究を進めるための環境整備,予備的実験の遂行を行なったに過ぎず,現時点では概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究計画に沿って TE-HVPT の効果を実験的に検証し,その結果を踏まえて,変形音声を使った課題(ドリル)の作成,及び,その課題の教育効果を測る。Preテスト,Postテストを行ない,効果の様子を検討するが,Pre とPostの間に,テストでは未使用の課題を用いて継続的に学習させる。Postテストの後,時間を置いて再度聞き取り能力を検証し,効果の継続性についても検討する。複数の研究機関において,並行して行なうことを予定しているが,Preテスト,ドリルの実施,Postテスト,(数ヶ月置いて)再度Postテス トと,半年以上かけてのデータとりとなるだろう。峯松研での予備実験によれば「母語話者には問題とならないが,学習者には大きな妨げとなる」音響変形の効果が高い。実験を通して,高い効果が期待される音声変形を追求する。聴き取り能力の向上は,聴き取り戦略が変わってきたことを意味するが,どのような認知的戦略の変化が起きたのかも検討する。さらに特定の聞き取り能力を向上させるために(例えば,r/l の弁別,s/thの弁別など)必要な音響変形は何か,というといにも理論的に,さらには,実験的に検討する予定である。
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