研究課題/領域番号 |
18F18726
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 尚 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (10251406)
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研究分担者 |
ROBERT LOIC 東京大学, 先端科学技術研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 移動性高低気圧波 / 準停滞性波動擾乱 / ジェット気流 / 環状モード変動 / 理想化モデル |
研究実績の概要 |
研究目的に掲げた通り,Robert博士のフランスでの研究成果の発展として,波動擾乱の東西波数展開に基づき,総観規模の移動性高低気圧波,さらに大規模な準停滞性波動擾乱,それぞれが運動量輸送や熱輸送を通じてもたらす東西平均した西風ジェット気流の加速・減速としてのフィードバック強制の定式化が完成した.さらに,周期1週間以下の移動性高低気圧波とそれ以上の準停滞性波動擾乱,それぞれがもたらすフィードバック強制についても定式化がほぼ完了した.さらに,その適用対象として,南半球中高緯度対流圏の西風変動に卓越する環状モード変動の位相反転や正負位相の極大前後の西風加速反転に着目することを決定した.この間,研究代表者(中村)のイスラエル訪問を機に,テルアビブ大のHarnik教授・Lachmy博士,ベルゲン大(ノルウェー)の小川博士を交えた国際チームが形作られた.この枠組でRobert博士は,自身が学位論文に向けて実施した3層の理想化(準地衡風)大気モデル実験の出力データを改めて解析する.併せて同様な観点から,小川博士が学位論文に向けて実施したより現実的な大気大循環モデルを用いた水惑星実験やLachmy博士(テルアビブ大)の実施したより簡略化された2層の理想化(準地衡風)大気モデル実験の出力データをRobert博士が再度解析し,3種類のモデル間で系統的な結果が得られるかを確認することが決定し,その解析が開始された.3層準地衡モデルと水惑星実験の初期解析結果は準停滞性擾乱の主導的役割を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた通り,フランスでの研究成果の発展として,移動性大気擾乱からのジェット気流へのフィードバック強制の定式化がほぼ完成し,その適用対象として,南半球中高緯度対流圏の西風変動に卓越する環状モード変動の位相反転や正負位相の極大前後の西風加速反転に着目することが決定した.しかも,ノルウェー・イスラエルとの共同研究として,Robert氏自身が活用してきた3層の理想化(準地衡風)大気モデルに加え,さらに簡略化された2層の理想化(準地衡風)大気モデル実験やより現実的な大気大循環モデル水惑星実験との比較を行う体制が整ったことで,研究の深みや幅が大きく増大した.
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今後の研究の推進方策 |
H31年度はRobert博士を中心に,上記のノルウェー・イスラエルとの共同研究を推進する.Robert博士は,自身が学位論文に向けて実施した3層の理想化(準地衡風)大気モデル実験の出力データを改めて解析し,環状モード変動に伴う西風偏差の符号反転,及び正負位相極大時の西風加速の反転,それぞれにおいて総観規模の移動性高低気圧波,さらに大規模な準停滞性波動擾乱のいずれかが,各々が伴う運動量輸送や熱輸送を通じてより主導的な働きを示したかを吟味する.同様な観点から,小川博士(ベルゲン大)が学位論文に向けて実施したより現実的な大気大循環モデル水惑星実験やLachmy博士(テルアビブ大)の実施したより簡略化された2層の理想化(準地衡風)大気モデル実験の出力データを再度解析し,3種類のモデル間で系統的な結果が得られるかを確認する.得られた結果は積極的に国際学会で発表すると共に,共著論文の執筆を進める.
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