本年度は、近藤格子系のダブロン励起の時間依存ダイナミクスの研究を継続するとともに、新たなテーマとして1次元強相関系の非エルミート的性質の研究を行った。以下に本年度の主な成果をまとめる。 ●前年度に続き、動的DMRGの最適化の方法の改良を行った。有限サイズの系に関して、境界条件を考慮したスペクトル関数の計算を行った。matrix-product状態の有効な圧縮法も開発した。●また、上記の発展テーマとして、1次元拡張ハバードモデルに「対称性に保護された新奇なトポロジカル相が発現することを指摘した。注目すべきことに、スピンギャップが存在しないにも関わらず、トポロジカル相が現れ電荷秩序相や超伝導相と共存する。●1次元多体系における自己エネルギーに起因する非エルミートな特性の研究を行った。筑波大学助教の吉田恒也氏との共同研究である。 具体的には、以下の2本の論文に成果を公表した。 ◆1次元スピン系の新奇トポロジカル相の提案“Topological phases arising from attractive interaction and pair hopping in the Extended Hubbard Model”これはハンブルグ大学の若手研究者Peschke氏とRausch氏の国際共同研究である。新たなタイプのトポロジカル相を量子スピン系で見出した面白い成果である。 ◆1次元ハバードモデルにおける例外点の形成“Exceptional points in the one-dimensional Hubbard model”さらに相関電子系の非エルミート的性質に注目した研究を行った。これは、本研究室のPeters氏と卒業生の吉田氏(筑波大助教)との共同研究である。 上述のように本年度も原著論文を発表したが、残念なことにコロナ禍のために国際会議などでの発表を行うことはできなかった。
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