研究課題/領域番号 |
18F18753
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 啓一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00503880)
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研究分担者 |
IACONI ROBERTO 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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キーワード | 恒星物理 / 連星進化 / 重力波天体 / 流体シミュレーション / 突発天体 / 共通外層 |
研究実績の概要 |
共通外層進化は恒星物理学において最も重要な現象の一つであるが、同時に最も理解の進んでいない現象である。これまで小質量連星に対して直接三次元シミュレーションが行われており、その基礎がようやく確立しつつある。本課題においては、世界初の大質量星の共通進化の本格的・直接三次元流体シミュレーションを行う。大規模シミュレーションの結果をもとに、共通外層進化がどのような突発現象として観測されるかの輻射輸送計算を行い、様々な天体物理への応用を行う。以上を持ち、連星進化における共通外層進化の役割の理解を目指す。 本年度、小質量連星における大規模シミュレーションの結果に基づき、共通外層進化において放出された物質の50年にわたる長時間進化について研究を行った。10年程度かけて一様膨張に漸近的に近づくことが明らかになり、またこの結果を用い放出物質内でダストが形成されること、そのため赤外域での突発天体として観測されるであろうことを明らかにした。この結果に基づいた論文を二編、現在執筆中である。 また、小質量星共通外層進化について、様々な質量や質量比についての組み合わせをパラメータとしたシミュレーション結果と小質量連星の観測的特徴を包括的に比較し、共通外層進化において広く用いられている簡単化の瀬統制等について検討した。この結果は現在国際査読誌に投稿中である。 課題の開始にあたり必要なPCや周辺機器を購入したほか、打ち合わせおよび成果発表のための国内旅費を使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記述したように、共通外層進化を経た天体がどのような突発天体として観測されるか、その理論研究が大きく進展した。本年度は小質量連星のシミュレーションをもとにした研究を進めたが、大質量連星の共通外層シミュレーションに関しても着実に準備が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には、小質量連星における大規模シミュレーションを行い、質量放出過程についての検討を進めた。この結果、共通外層期に放出された物質中でダストが大量に形成される可能性を提案した。大量に生成されるダストは中心天体からの可視光を遮蔽し、赤外線での突発天体となると予想される。これをもとに、これまでに知られている数例の共通外層進化の候補天体とされる突発天体観測データとの比較を行う。 上記の課題を遂行する過程で、大質量星連星の共通外層進化流体シミュレーションにおける問題点とその解決手法が洗い出されてきた。本年度は、この知見をもとに大質量星連星の共通外層進化の大規模シミュレーションを開始する。
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