研究実績の概要 |
ビオチン-ストレプトアビジンは生物界で最も結合定数の高い組み合わせであり、この組み合わせを用いたStrep-tagとして知られている蛋白質の発現・精製システムが開発されている。8つのアミノ酸からなるタグペプチドを認識するストレプトアビジンを担持したビーズで目的タンパク質を高純度に精製することができるシステムである。 しかし、生体内にはビオチンがビタミンとして存在しており、ビタミンが存在する系では精製システムも不活化され、ビーズに担持したストレプトアビジンが機能を失うケースが想定される。そこで本研究では天然型ビオチンに干渉されない新規なタグ精製システムの構築を目指した。 これまでに我々はストレプトアビジンの活性部位の4カ所に変異を加えると天然型ビオチンに全く結合せず、非天然型ビオチンにのみ結合する変異型ストレプトアビジンの作製に成功していたが、そのノウハウを生かし、まず8つのアミノ酸からなるタグペプチドとD27G/L110E、D27G/S112Y、D27G/S112Fの変異体との複合体のⅩ線構造解析を試み、それぞれ1.30、1.43、1.40Å分解能の精度で解析した。ペプチドとの間の結合定数は、4.51×10-7M (S27G), 4.15×10-6 M (S27G/L110E), 2.45×10-6 M(S27G/S112Y), 1.31×10-6M (V2112 D27A)となり、野生型Wild SAの値6.91×10-7Mの値とほぼ変わらなかった。 得られた構造を基にさらに構造機能相関を検討し、1つの変異体で天然型ビオチンには結合せず、タグペプチドにのみ結合する変異体ストレプトアビジンを作製することに成功した。これによってビタミンとして存在するビオチンに阻害されない新規なタグ精製システムを構築することができた。
|