研究課題/領域番号 |
18F18774
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
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研究分担者 |
ROZWADOWSKI TOMASZ 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2020-03-31
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キーワード | ガラス / 液晶 / 冷結晶化 |
研究実績の概要 |
分子がどのように凝集し,そこでどのように運動することによってマクロ物質の物性が発現するかは,分子集合体の物性科学として最も基本的な問いである.最近では,特に,特定の方向についてナノスケールの大きさを持つ空間に閉じ込められた場合が注目されている.本研究では,分子の変形をも考慮する必要があると予想される液晶性化合物を対象とする事により,ナノ空間における分子集合体の物性科学の質的発展に貢献することを目指している.具体的には,液晶秩序,結晶化あるいはガラス化にどのように影響があるか,またそのメカニズムがどのようなものかを明らかにする事を目的としている. そこで,2018年度については12月以降の短い期間ではあったが,類似の分子構造をもちながら,そのわずかな違いのために相挙動が異なる4化合物(液晶性を示さない1化合物を含む)について,熱分析的手法(示差走査熱量分析,光学顕微鏡観察,透過光量熱分析など)を用いた実験を実施し,液晶相の発現とその種類,ガラス転移の有無,冷結晶化挙動を確認した.冷結晶化挙動の解析を行い,分子の運動性との関係について検討した.論文としてまとめることができるデータが得られたので,論文の執筆に取りかかった.また,実験結果をふまえ,2019年度に予定している断熱型熱量計による実験の試料を選定した.また,細孔性物質に導入した実験を行うため,細孔性物質を選定,購入し,実験の実施方法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱的手法による実験は概ね順調に進んでおり,冷結晶化に関する検討では,予想以上の成果が得られたため論文の執筆に取りかかった.2019年度の実験の準備も概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に選定した条件で試料を調製し,時間の許す限り断熱型熱量計により精密な熱容量測定を行う(所要期間:3週間/試料).とくにガラス転移では,断熱型熱量計がmHz領域の超低周波分光器として働くことを利用し,誘電緩和現象とエネルギー緩和現象を区別する.ナノ空間への制限効果,とりわけ「負圧」の効果に注目して実験結果を総合的に解析し,分子運動と秩序形成に対する影響についての分子を起点とした記述としてとりまとめる. 前年度の結果をもって複数の学会・研究会に参加し,当該分野の研究者と議論を行い,研究の質を高める.
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