運動トレーニング者を対象(男子学生,10名程度)に,14日間の暑熱順化(最大酸素摂取量の50%~55%負荷の自転車運動を60分間,34°C・40%RHと34°C・80%RHの環境下で実施)と脱順化を行い,34℃・80%RHの環境下で最大酸素摂取量の50%~55%負荷の自転車運動を60分間実施し,順化の影響をみるため体温調節パラメータを測定した(被験者3名).14日間の暑熱順化でいずれの環境条件でも安静時の体温低下,運動時の発汗量(全身発汗量も含む)・皮膚血流量の増加がみられた.両条件での違いとして発汗反応より皮膚血流反応に違いがみられる傾向にあった.また,運動時の体温上昇は高湿・環境での暑熱順化の方がいくらか小さくなった.一方,環境条件での違いによる脱順化の差異はみられなかった.2020年度も継続して順化実験を実施していく予定である.
また,追加研究として,高温・高湿環境への季節順化と脱順化が発汗とその他の体温調節機能に及ぼす影響を検討した.12名の男子学生に対して,冬・夏・秋(秋は8名の被験者)に32℃・75%相対湿度の環境下で最大酸素摂取量の50%負荷の自転車運動を60分間実施し,体温・循環調節パラメータを測定した.夏への季節順化は冬と比較して局所・全身の発汗反応(体温に対する発汗反応)や汗の塩分濃度低下などの改善が認められ,これまでの報告通り,夏への季節順化が認められた.一方,高温・高湿環境下での汗の蒸発量(有効発汗量)には両季節で差がなく,無効発汗量(蒸発しない発汗量,運動中,フロアーに落ちる汗の量)は夏>冬(有意な差)となり,汗が蒸発する効率(発汗効率)は夏<冬(有意な差)となった.さらに,一定の水蒸気圧の環境が運動時の体温調節反応と運動パフォーマンスに及ぼす影響も検討し,運動時の環境条件として水蒸気圧の影響が重要であることが示された.
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