研究課題
複数の秩序をもつスピンクロスオーバー錯体に対して、その動的変化に着目して温度相転移と光誘起相転移の実験をおこなった。その結果、(1)光誘起相転移においては熱的相転移には現れない状態が出現する場合があること、(2)2つの秩序が同時に変化する熱的相転移をもつ物質でも光誘起相転移によって得られた準安定状態からの緩和では2つの秩序が時間的に分離して転移が生じること、を明らかにした。このような秩序変数の分離観測は非平衡相転移の特徴を表すものであり、2つのイジング変数をもつ現象論的数理モデルを構築した。さらに、低次元電荷秩序型錯体に関して、光誘起相転移初期過程での分光学的手法で調べ、電荷秩序形態の光制御を達成することが出来た。この実験のために必要な、赤外検出器や分光器、低温顕微用クライオスタットを備品として購入した。また、動的相スイッチを示す物質系の拡張、さらには電子-構造複合変化を時間分解構造解析法によって明らかにするための予備実験を行い、50THzに達する超高速光スイッチ候補物質を発見する等の準備的物質探索の成果を上げることができた。物質開拓では、MeEDO-TTFの錯体開拓を行い、室温直上の303Kで1次の半導体-半導体転移を起こすPF_6との単結晶性錯体を得た。振動分光法により、低温相では電荷が局在し電荷秩序が形成されているが、高温相ではその秩序が時間的に揺らいだ状態にある事が判った。本錯体については、室温条件下、高電場パルスによる導電性変化を測定したが、ジュール熱の影響が支配的であった。さらなる短パルス化や低温・圧力下での測定を検討中である。また、本ドナー分子からなる錯体について、ドナー分子の積層様式から電子状態の次元性が予想できることがわかった。この目的のために単結晶X線構造解析装置を購入した。さらに、昨年度までに得られた合目的的新規機能性有機電子材料の設計指針を基にして、ジセレナジチアペンタレン(STP)の合成を行い、(ST-STP)ReO_4の作製に成功した。この新規電子材料は動的相スイッチとして期待が持たれる分子内電荷分離状態をとっていることがわかった。またEDO-TTF類縁体として、EDO-EBDT誘導体を合成し、185Kで金属-絶縁体転移を示す新規錯体(DMEDO-EBDT)_2PF_6の開発にも成功した。
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