研究課題/領域番号 |
18GS0210
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
齊藤 直人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20321763)
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研究分担者 |
村上 哲也 京都大学, 理学研究科, 助教 (50219896)
村田 次郎 立教大学, 理学部, 准教授 (50360649)
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キーワード | 核子構造 / スピン / 量子色力学 / クォーク / グルーオン / データ収集 / 電子回路基板 / トリガー |
研究概要 |
本研究の目的は、スピン偏極した陽子同士の衝突によりWボゾンを生成することで、核子のスピン構造を明らかにすることである。そのためには、稀にしか起こらないWボゾン生成事象を効率よく検出する必要があり、我々はWボゾンの崩壊に特徴的である高エネルギーミューオンを検出してデータ収集系をトリガーする、トリガー回路を開発、設置、運転した。 昨年度までに収集したデータの解析を通して、トリガー機能の評価を行った結果、当初の目標性能の達成が証明された。一方で、最高エネルギーにおける衝突、もしくはビームトンネル内で生成される多くの低エネルギー粒子のバックグラウンドが、性能に限界を与えることも明らかになった。これらはビーム起源のバックグラウンドであるので、コンクリートや鉄のシールドを加えて低減した。 本格的運用の経験を積み上げ、とくにトリガーを安定的に稼働させる為の必須パラメータセット、チェンバーの電圧、ディスクリミネータの閾値、時間遅延など、その設定方法/安定性のモニターを含めて改良を行い、完成した。 また、今後の維持管理のために、操作・診断手順などについて、文書化を進めた。 このシステムの最終評価を行う委員会を開催予定期間に、震災があった為、研究費の繰り越しをお願いして認めて頂いた。研究体制の復旧時間が不透明だった為、一同に会せずとも評価出来るよう、システムの概要とそのパフォーマンスについて、予定より詳しく論文にまとめた。その内容は国際会議などで発表し、共同研究者全員が見られる技術レポートとして公開、更にその濃縮版を査読付き論文誌に投稿した。また、物理解析についても進めている。加速器のルミノシティが不十分で、従ってWボゾンも限られた統計ではあるが予備的結果を得て、学会で発表した。既存の現象論的模型と精度の範囲で一致する結果となり、最終型にするべく追い込んでいる。今後は、統計を増やして模型の選別に踏み込める予定である。
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