研究概要 |
今日電子顕微鏡の分解能は, 1Aに到達しているが, 深さ方向の分解能はたかだか100A程度に留まっている. 高分解能3次元像を観察するため, 各方向からの像を撮影後3次元像を再構成するトモグラフィー法があるが, 投影原理に基づく正しい再構成には各方向からの焦点深度の深い観察像が必要になる. 一方, 高分解能電子顕微鏡で重要となる, 試料の位相情報は, 焦点位置によってコントラストが反転し, トモグラフィー法では正しく3次元位相像を再構成出来ない. これがナノメーター分解能位相トモグラフィー電子顕微鏡実現を妨げていた原因であった さて3次元結像理論によれば, 傾斜照明と画像処理を併用する, 新しい像観察手法により振幅・位相像が分離出来, 位相像もまた長焦点深度かつコントラスト反転無しに観察可能である. さらに本手法は結像に関する「相反定理」により, 透過電子顕微鏡, 走査型透過電子顕微鏡のいずれにも適用出来る. 本研究の原理による位相像長焦点深度観察手法は透過電子顕微鏡, 走査型透過電子顕微鏡いずれにも適用可能であるが, 前者では試料ドリフト, 後者では鏡体の機械的振動の影響を受けやすいと予想される. 観察時間内での試料ドリフトの完全除去は困難と判断して, 走査型透過電子顕微鏡を選択した 本研究では, 純国産技術により (1) 輪帯照明とアレイ型検出器・並列画像処理システムによる新しい長焦点深度位相像観察方式の開発, および (2) 超高輝度電子銃とコンパクト収差補正システム搭載, 高精度3次元試料回転ホルダー装備STEM(走査型透過電子顕微鏡)鏡体の開発, を行う 本研究は, ナノメーター分解能で, 試料の位相情報の(3次元分布3次元位相像)を観察できる新しい電子顕微鏡技術の創出を目指すものであり, 応用分野として, 半導体中の3次元積層欠陥の可視化や, タンパク質などの3次元ナノ構造解析などが考えられる
|