研究概要 |
1.ドメインタンパク質によるホスホイノシタイドの検出と微量定量法の確立 蛋白質の大量発現、精製しやすさを考えて、PI(4,5)P2を認識する、PLC δ1PHドメイン、PI(3,5)P2を認識するGRAMドメイン,PI(3,4)P2を認識するTAPP1 PHドメイン、PI(3,4,5)P3を認識するGRP1 PHドメイン、PI(3)Pを認識するEEA1 FYVEドメインとPI(4)Pを認識するFAPP1 PHドメインを選択し、数nMから数10nMという非常に強い結合活性を持つものを得た。上記脂質結合ドメインを用いて細胞や組織中の微量ホスホイノシタイドの定量を試みた。薄層クロマトグラフィー(TLC)にて簡単にホスホイノシタイドを展開した後、ホスホイノシタイドをメンブランに熱転写し、ドメイン蛋白質で検出するという方法(蛋白質のウエスタンブロットと同じ技法)の開発をおこなった。この手法を用いて、インスリンによる細胞中のPI(3,4,5)P3の変動を12cmシャーレ一枚の細胞で調べることができた。 2.新たなホスホイノシタイド結合ドメインの探索 脂質に結合する様々なドメインをアミノ酸配列から探し出し、WAVE2の活性化に関与するIRSp53のRCBドメイン、膜輸送に関与するCIP4やFBP17のN-末のFCHドメインにcoiled-coil構造を加えた領域(EFC domainと命名)にホスホイノシタイド,特にPI(4,5)P2が強く結合することを見つけた。EFC domainを持つ蛋白質を細胞に発現すると膜のチューブ形成が見られた。更にPI(4,5)P2を含むリポソームにこの領域の蛋白質を加えてもリポソームをチューブ状にする作用があった。これらの結果からこれらの脂質結合領域は膜の変形を起こし、膜チューブ形成を生じることを証明した。脂質に結合できない変異体ではそのような作用はないこと、細胞に発現させるとendocytosisが異常になることからendocytosisに際して膜の変形を起こす作用を有している事を証明した。
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