研究概要 |
我々はイノシトールリン脂質結合蛋白質探索中に膜のイノシトールリン脂質に結合するだけではなく、膜の形作りにかかわる一群がある事を見いだした。それらの蛋白質は様々な機能を有するが共通して膜脂質に結合して膜の形を変える性質を持つ。更に網羅的に脂質結合活性を持つ蛋白質を同定するため、酸性脂質より作成したリポソームに特異的に結合する蛋白質をラット脳抽出液を用いてLC-MS-MSで解析した。その結果可溶性画分から約400種、膜画分から約400種の蛋白質を検出した。これら結合して来た蛋白質をデータベース上で調べた所、ほぼ70%近くが脂質結合ドメインを有するものであった。更に本法の確実性を調べるため、今迄に脂質結合活性が報告されていない蛋白質をランダムに10個とり、脂質結合活性を見た。すると10全ての蛋白質が酸性脂質に結合し、本法の有用性が示された。その中でアクチン結合蛋白質Coronin1-Aについて脂質の関与を詳しく調べた。Coronin1-Aは酸性リン脂質の中でも特にPI(4,5)P2と特異的に競合し、膜に存在した。PI(4,5)P2が外部刺激を受け分解されると、膜から遊離して、アクチン繊維に結合する。そこでArp2/3と拮抗して枝化したアクチン繊維を脱重合することで、葉状仮足形成を抑制する。PI(4,5)P2はCoronin1-Aを抑制することで、枝分かれ様のフィラメントを作り出す作用をしている事を明らかにした。 これらの結果から予想よりも多くの蛋白質が膜の酸性脂質と結合し,活性制御を受けている可能性が示唆され、脂質の重要性の認識が益々高まっていくであろう。
|