研究課題/領域番号 |
18GS0313
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚谷 裕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90260512)
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研究分担者 |
堀口 吾朗 立教大学, 理学部・生命理学科, 准教授 (70342847)
山口 貴大 自然科学研究機構, 基礎生物学研究所, 助教 (60450201)
FERJANI Ali 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (20530380)
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キーワード | 器官サイズ / 分子遺伝学 / 発生・分化 / 葉 / 補償作用 |
研究概要 |
(1)通常の補償作用とは逆に、細胞体積が減少し細胞数が増加するタイプの変異体を解析し、原因遺伝子群をクローニングした結果、植物個体の中で、特定の葉位に特定の細胞数・細胞サイズを規定するシステムを新たに解明した(Usami et al. 2009)。この、植物の齢に応じて葉のサイズが変化するheteroblastyについての、新たな制御系の解明は、もともとの研究計画が、単一の葉の中での細胞分裂と細胞伸長の統合という視点に立っていたものに対し、これを1つの葉の中のみならず、それぞれの葉のサイズを、植物個体としてどう制御しているか、というより大きな課題の解明に発展拡張したものである。なお、この成果については、一般市民に対する新聞での報道もなされた。 (2)補償作用を引き起こす条件として、細胞増殖がある一定のレベルの閾値を超えて低下することが必要であることを明らかとし、またそのような低下をもたらす原因遺伝子としてOLI遺伝子をクローニングした(Fujikura et al. 2009)。補償作用の誘起される条件の解明としては、これが最初の報告となる。 (3)Cre/Lox系を使ったキメラ誘導系の確立をすすめ、上記の、補償作用が誘起される条件の解明のための、細胞間コミュニケーションの有無を調べる実験系を立ち上げることに成功した。 (4)上記の諸研究は、シロイヌナズナをモデル系とした通常の両面葉における細胞増殖制御系に関する解析である。従来、ここの立脚点に対して疑問が持たれたことはなかった。その両面葉における細胞増殖制御は、背腹性の確立を条件としていることが知られている。しかし本研究では、単面葉においては、そうした背腹性の確立を前提としない独自の細胞増殖制御系があることに注目し、その分子制御の実体解明をも進めた結果、これまでに、単子葉植物の系統において特異な細胞増殖制御系がその分子実態ではないかという作業仮説を得、新たなモデル系としてJuncus属の植物の葉をターゲットとした解析を進めている(Yamaguchi and Tsukaya 2010)。今後、これらのリソースを活かして、集中してデータの取得と解析、論文発表に入る予定である。 (5)またこれまでに海外の一流の関連分野の研究者を多数招聘し、国際ワークショップの開催を通じて、この研究ジャンルの定着と発展を促した。その直接的な成果として、2010年にJournal of Plant Research誌において、Leaf development and evolutionというタイトルでの特集号を組んだ。
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