研究課題
本研究はオルガネラ間のダイナミックな相互作用、さらにはその進化について考察するための研究基盤を確立する事を目的として以下の項目に焦点を絞り、研究を進めている。平成22~23年度は以下の結果を得た。1.オルガネラ間相互作用とオルガネラの進化ミトコンドリアのDNAポリメラーゼが核やアピコプラストと大きく異なる特異的な性質を持つ事を明確にし、第1選択薬であるクロロキンに極めて感受性である事を見出した。またマラリア原虫に最も近縁な渦鞭毛藻との分岐点近傍ににあるパーキンススのミトコンドリア遺伝子の翻訳において読み枠をずらすribosomal frameshiftが全てのAGGとCCCコドンにおいて起こっている事を明らかにした。2.オルガネラDNAの複製と転写およびタンパク質合成系マラリア原虫ミトコンドリア内で働くリボソームは、リボソームRNA(rRNA)が著しく断片化、縮小化した形でミトコンドリアゲノムにコードされ、それらが断片化された転写物のままで機能していると考えられている。このような特異なrRNAを含むリボソームの全貌を明らかにするために、エピトープタグを持つミトコンドリアリボソームタンパク質を発現する組換え原虫の作成を試み、タグ付きタンパク質を発現する原虫を得た。3.ミトコンドリアと共通祖先を持つオルガネラ嫌気環境下での特殊なミトコンドリアの進化を理解するために、嫌気・微好気腸管内寄生原虫赤痢アメーバのミトコンドリア関連オルガネラの構成タンパク質の同定と機能解析を行った。機械的破砕と濃度密度勾配により分離されたマイトソームのプロテオーム解析により、機能未知の多くのタンパク質が同定され、代表的タンパク質の局在がIFAにより確認された。他種生物で細胞質並びに色素体に存在する硫酸活性化経路が同定され、その生理的活性が証明された。硫酸活性化経路に関する酵素、ADP/ATP輸送体、マイトソームシャペロンのいずれも原虫の増殖に必須であることが、遺伝子発現抑制体を用いた解析により示された。以上嫌気環境下での特殊なミコトンドリアの機能進化が明らかにされた。
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