研究課題
学術創成研究費
真核生物は細胞内に種々のオルガネラを持ち、それらの働きによって高度な生物機能を支えている。それらの中で、ミトコンドリアや葉緑体は細胞の生存、増殖に不可欠なエネルギー転換反応を担うオルガネラであり、精力的な研究が進められた結果、その起源、反応機構、相互作用に関して多くの事実が明らかになってきた。さらに低酸素環境に適応し、好気性生物とは大きく異なった寄生性生物の特殊なミトコンドリアの存在が明らかになり、ミトコンドリアを持たない真核生物まで報告されるようになってきた。さらに興味深い事に、年間数百万人の死者を出すマラリアの病原体であるマラリア原虫が、機能的に未分化の葉緑体(アピコプラスト)を含んでいる事実が明らかとなった。この様に従来のミトコンドリアや葉緑体の概念を越え、独自のDNA を含む多様なオルガネラが寄生性の生物で発見されつつある。しかし、その成立過程、生理機能の詳細、オルガネラ間の相互作用に関する情報はごく僅かであり、エネルギー転換機構の基本原理の解明とともにオルガネラの多様性に関する生物学的意義の解明が求められている。そこで本研究ではこれらの未知の問題を解決し、これまでのモデル生物の研究からは想像もできなかったようなオルガネラの多様なエネルギー転換機構を解明するとともに、この機構を中心としたオルガネラ間のダイナミックな相互作用、さらにはその進化について考察するための確かな基盤を確立する事を目的としている。本研究では生化学、分子生物学、細胞生物学、分子寄生虫学、進化学などこれらの課題に直接関連する分野の研究者が緊密な連係をとって研究を進め、これまでになかった包括的組織的研究体制を構築する事により、未来予測も含めた新しいオルガネラについての学問領域を創る事が期待できると考えている。以上の目的から(1) オルガネラ間相互作用とオルガネラの進化、(2) オルガネラDNA の複製と転写およびタンパク質合成系、(3) ミトコンドリアと共通祖先を持つオルガネラ の3 課題に焦点を絞って研究を進めている。
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