研究概要 |
時として激変する光環境下でも光合成反応効率を高く保つため, 酸素発生型光合成の電子伝達系で直列に機能する2つの光化学系(PSIとPSII)の構造と機能は大きく変化する。本研究では, アンテナ複合体および光エネルギー変換装置である光化学系複合体の構造と機能のダイナミクスの研究を進めた。特に, PSIとPSIIの光エネルギー分配の不均衡を改善するステート遷移と分子集合, 光阻害などによる代謝回転の分子機構に注目した。その結果;(1)ステート2状態でPSI複合体に結合するアンテナ複合体LHCIIの量を生化学および分光化学的手法により決定した。その結果, 3種のLHCIIが合計で5-6コピー存在し, PSI-LHCIとPSI-LHCI/IIには約240および320分子のクロロフィルが結合することが分かった。(2)ステート1から2へのステート遷移において, PSIIに結合するLHCIIがリン酸化されPSIへ移動することを生化学的に示し, LHCIIの移動の分子機構を明らかにした。(3)PSI複合体の分子集合において, その分子集合中間体が葉緑体にコードされるYcf4を含む大きな複合体と結合することにより, 分子集合が効率化される分子機構を明らかにした。このYcf4複合体はPSI複合体の分子集合において足場タンパクに相当する機能を果たしていると考えられる。(4)PSI複合体の結晶構造解析を進めた。複合体の精製方法を改善し, これまでにより結晶の質を少し改善することに成功し, 10Å程度の分解能を示すX線回折が得られた。しかし, 本格的な構造解析を進めるには更に結晶の質を高める必要がある。(5)PSIIの構造と機能のダイナミクスに関与する小型のサブユニットPsbTとPsb30がPSIIの構造と機能のダイナミクスに重要な役割を果たしていることを示した。
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