研究概要 |
昨年度の研究は、祖先脊椎動物は現世のポリプテルス,ヤツメウナギのようにその植物割球を卵黄割球とし、内胚葉は赤道軸割球より生じたこと,真骨魚および羊膜類に至る両系譜で、卵黄性植物割球は融合し、卵黄割球を生じたのに対し、両生類は卵黄性植物割球を内胚葉に2次的に組み込んだ特殊な動物達であることを示唆した。本年の研究は、祖先硬骨魚が真骨魚に至る系譜と四足動物に至る系譜に分岐した後、祖先総鰭動物の植物割球の一部に、Otx2を後方化因子の抑制に用いるためのエンハンサーと遺伝子カスケードが成立し、両生類ではこれが頭部オーガナイザー活性を持つ深部内胚葉に組み込まれたことを示唆した。他方でこの植物局割球は羊膜類のハイポブラストをへて、哺乳類の臓側内胚葉(AVE)へと受け継がれ、マウスAVEとカエル深部内胚葉は相同な構造であることが示唆された。他方真骨魚に至る系譜では頭部形成にOtx2を用いるためのエンハンサーと遺伝子カスケードは成立しておらず、またポリプテルス,サメ、ヤツメウナギでは別のエンハンサーと遺伝子カスケードを用いていることが示唆され,これらの動物での頭部形成機構に興味が持たれる。他に、EPB41L5が制御する上皮/間充織転換の分子機構、Otx1/Otx2による吻側神経外胚葉、前脳・中脳形成の分子機構、Emx2による間脳・終脳形成の分子機構についての解析を進め、microRNA-9が一連の遺伝子発現を制御して終脳形成全体を調整する仕組みを明らかにした。またこれらの研究と密接に関係して、トカゲ、カメ、スンクス、ブタでの初期胚発生研究体制を確立し、前後軸形成・頭部誘導・皮質形成の分子機構の比較解析を進めた。
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