THEやQSに代表される世界大学ランキングの評価項目の中に、論文の被引用数にもとづく評価項目があるが、これはScopus等の論文・引用データベースがもととなっている。その収録誌の多くは英語論文であり、それ以外の言語で書かれた論文についてはほとんど収録されず、評価の対象となっていない。本研究では、上記データベースに収録されていない論文も含め低コストで客観的な定量的指標について、検証を繰り返した結果、ダイバーシティ・ファクター(DF)のバージョンアップ版であるiMD(index for Measuring Diversity)を共同開発した。ここに至るまで、書誌情報より収集した数値をデータベース化、専門家へのインタビュー調査および有識者によるピアレビューを経た。iMDは、次の計算式で算出するものである。 log_n(α×C+β×A) 【A : 所属機関数、C : 所属機関の立地国】 αとβはCとAの重み付け係数である。これにより、iMDは、学術誌等の1年ごとの多様性を著者所属とそれらが立地する国という観点から、必要に応じた重み付けで定量化することが可能となった。なお、Aの値の幅が大きすぎるため、iMDでは対数スケールを採用した。これにより、従来は、データベースを保有する会社などにアウトソースした被引用数や、どの雑誌に掲載されたとしても、1本は1とカウントされ論文の本数で評価されていた研究業績について、分野や使用言語に関係なく算出可能となり、人文社会系分野のニーズに部分的に答えうる新たな指標を開発することができた。さらに、2月15日に人文社会系分野における研究評価についてのシンポジウムを開催し、外部有識者とiMDの有効性について意見交換を行った。iMDは全てのニーズに応えられるものではないが、本研究を通じて、iMDは個人や組織の研究力をより多面的に、総合的に把握する一助となると考えられる。
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