○研究目的 本研究は、伝統的なポリネシア文化圏としてのハワイの歴史と文化に着目し、高校世界史の教材とすることを試みたものである。ハワイの歴史や文化を学ぶことは、近代ヨーロッパの価値観とは異なるものに触れる機会であり、歴史的にみた近代の欧米の思考や行動を異なる視点からとらえ直すことにつながる。そうした授業を実現する教材として、これまで描かれこなかったポリネシア文化圏としてのハワイの歴史と文化を、高校世界史の教材とする視点から現地踏査を実施し、どのような遺跡や博物館資料を授業教材として扱うことが有用であるのかを明らかにすることを目的とした。 ○研究方法 1. ポリネシア文化圏としてのハワイを描いている書籍を収集する。 2. ハワイでの現地調査のためのポリネシア文化に関連する遺跡の情報を収集し、調査内容を定める。 3. 現地にて遺跡の踏査および博物館を見学し、写真等での記録を行い、資料とする。 4. 現地で収集した資料を教材として高校世界史Bの授業を構築し、実践する。 5. 生徒の成果物・アンケートから教材としての有用性を検討する。 ○研究成果 現地への訪問では、ハワイ島とオアフ島において遺跡の踏査と博物館見学を行った。祭祀や農耕の遺構、道具類など、授業教材として有益だと考える資料を数多く得ることができた。それらを用いた授業では、生徒にポリネシア文化の特徴を画像資料や映像として提示し、欧米的な価値観とは異なる文化で育まれた点に着目させた。その上で、欧米で「文明」とされるものや「現代社会」自体を改めて生徒自身が考え直すレポート課題を課し、そのレポートについて読み合う授業を展開した。 実践の結果、生徒のレポートやアンケートからは「異なる視点」から生徒が考えられていた様子を確認できた。
|