研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究の目的は, カリキュラム・マネジメント(以下、CMと略記)に則って設定された授業を実践し、体験学習が教科学力の育成にどのような効果があるのかを検討することである。 【研究方法】 大阪府下A小学校1年生29名を対象に、児童の実態に応じた「考えて書く力」の育成をめざした国語科と生活科を連動させたCMを実施し、体験学習において、児童がどのような反応をしているか、身につけている力は何であるのかを分析する。用いたデータは授業中に作成したノートやプリントなどの記述内容、授業全体を撮影した動画や音声データから得られる発言内容の逐語化等である。研究における体験学習とは、「再発見に結びつく体験的な活動の実施」「合科的・関連的なカリキュラムの作成」「自己理解を深める言語活動の実施」の「考えて書く力」を育成する環境の3要素を満たす2018年5月から2019年2月に実施した全24時間分の授業を対象とする。 【研究成果】 体験学習後の児童の表現は、最初のうちは「事実(発見した内容や体験中の出来事を具体的に表す名詞、形容詞、形容動詞、独自の感覚的な表現など)」や「感情(○○できてうれしい、○○はいやだ)」を説明する文が中心になるが、徐々に「疑問」や「仮説」、「今後の展望」に関する文が付け加えられた。また、「事実」は数値を取り入れた算数的な思考や、国語で学習する比喩表現を使用するようになり、より客観性のある文章表現ができるようになっていった。 以上のことから、CMにおける体験学習によって児童の学習意欲が高まり、各々が課題意識をもって取り組むため、課題探究力、課題設定力が身に付いた。また、言語活動により文字や語彙の獲得に効果がある共に、児童自身がもつ経験や既習事項と絡めて児童の思考が深まるため、体験学習は量的にも質的にも文章表現力の向上に効果があると考えられる。
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