初めて微生物を扱う学生実験や、中学生対象の社会貢献事業「夏休み自由研究お助け隊」などで用いることのできる、実習時間の制約なしに実験室から持ち出しての培養と観察が可能である安全性を持ち合わせた教材開発に取り組んだ。食品に使われる米麹(麹菌)を取り上げ、デンプンを分解して糖を生成する過程を、培地成分に組み込んだ色素の分解で確認できるような実験系を目標として、培養容器の種類、培地組成、インジケーターとなる色素の選定、培地へ組み込む手段などについて検討を行った。 1) 培養容器の検討 一般的に使われる滅菌シャーレのほか、細胞培養に使われる培養フラスコ(ベントキャップ付き)を使用し、寒天培地の角度を変えて固めることで深度のある培地での麹菌の生育を長期間観察できるようになった。ただし、この培養方法では実体顕微鏡やルーペでの観察が難しいため、最適な条件を見つけるため引き続き検討を行っている。 2) 培地組成の検討 市販のポテトデキストロースブロスを10倍に希釈して寒天で固めることでインジケーターの変色を妨げることなく十分な生育と分生子の変化を観察することができた。 3) 培地に添加するインジケーターの選定と添加方法の検討 α-アミラーゼ測定に用いられる研究用試薬(Phadebas® Amylase test)を培地に添加することで容易に菌糸の生育に伴うデンプンの分解を目視で観察することができた。基質が不溶性の青色デンプンポリマーであるため培地に均等に添加する必要があり、引き続き界面活性剤の種類や添加量について最適な条件の検討を行っている。 今後はルーペや実体顕微鏡での観察に展開できるような培養容器の選択や培養条件の検討を行い、目視での観察だけでなく発展的な実験に用いることのできる教材として開発を続けていく予定である。
|