研究実績の概要 |
熱可塑性CFRP(CFRTP)は, 熱硬化性CFRP(CFRTS)と比較して製造コストが安価であることから, 今後, 益々の普及が期待されている. 報告者らは過去に, 複合材製液体酸素タンク用のライナー材として, 熱可塑性のポリカーボネート(PC)樹脂を超高弾性ピッチ系炭素繊維(CF)で強化した複合材(CFRTP-PC)を開発した. CFRTP-PCライナーにおけるCF/PC樹脂の界面接着性は, 機械的強度のみならずタンク内の気密性を確保する上でも重要である. 本研究は主に, CFRTP-PCにおけるCF/PC樹脂界面の接着性の向上を図ることを目的として進められた. 今回, オートクレーブで成形されるCFRTP-PCのガスバリア性に着目し, 「JIS K 7126-1」に準拠したヘリウム(He)ガス透過率試験を実施した. 本研究を通じて得られた主な知見を下記に記す. 1. CFクロスを電気炉で500℃, 1時間加熱することにより, CF表面に塗布されたサイジング剤(エポキシ系樹脂)を除去した結果, CFRTP-PCのHeガス透過率は約5.0×10^<-11>mol・m/(㎡・s・Pa)から約1.2×10^<-14>mol・m/(㎡・s・Pa)まで低下した. 2. 上記1の処理に加えて, PC樹脂(50μm厚のフィルム)を120℃で5時間, 予備乾燥した結果, Heガス透過率はさらに約1.0×10^<-15>mol・m/(㎡・s・Pa)まで低下した. なお, CFRTP-PC試料を-196℃の液体窒素に繰返し100回浸漬して繰返し熱応力を与えたが, Heガス透過率は殆ど変化しなかった. 3. CF/PC樹脂の界面接着性をさらに向上させるため, 上記1の処理に加えて, PCフィルムを2時間オゾン酸化処理したが, Heガス透過率は未処理素材によるCFRTP-PCと殆んど変わらなかった. PC樹脂に微小なボイド等が生成している可能性もあるため, 今後詳細な分析が必要である. 4. 薄いニッケルメッキ層を設けた汎用PAN系CFの液体酸素適合性試験を実施した結果, 着火確率はメッキなしの17/20から9/20に低下した.
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