プレガバリンは神経障害性疼痛に用いられ、近年はがん性疼痛を有する患者に対する処方頻度が増加している。一方で、中枢症状(傾眠、めまい、せん妄等)により減量や中止に至る例も多く、それに関連した転倒・骨折は、新たな医療処置を要する二次的な有害事象として臨床的課題である。プレガバリンは腎排泄型薬物であり、腎機能に応じた投与量調節が添付文書に定められている。しかし、腎機能による投与量調節はプレガバリンの効果及び有害作用の発生率とは関係がないことが報告されており、中枢症状発現の個体差要因も十分に解明されていない。申請者は独自に開発したUHPLC測定法を用いて、プレガバリン投与患者を対象にヒト血漿中プレガバリン濃度測定を行い、添付文書に定められている投与量において血漿中プレガバリン濃度は個体差が大きく、その変動要因が腎機能およびがん患者であることを明らかにしてきた。本研究期間においては、がん患者を対象として、プレガバリンの中枢症状発現のリスク因子を明らかにすること目的に、血漿中プレガバリン濃度、がん悪液質スコア(Glasgow Prognostic Score)、オピオイド鎮痛薬の併用、および臨床検査値に着目して解析を行った。その結果、がん患者における血漿中プレガバリン濃度の変動要因は腎機能および炎症マーカー(CRP)であることを見出した。また、中枢症状の発現に関しては、血漿中プレガバリン濃度は強い関係は見られなかった一方、オピオイド鎮痛薬を併用し、がん悪液質スコアが高い患者において、中枢症状は有意に増加することを見出した。オピオイド鎮痛薬の併用とがん悪液質スコアの臨床的評価は、がん患者におけるプレガバリンの薬物動態および中枢症状発現の予測に有用である。
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