研究課題/領域番号 |
18H00607
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
寺田 俊郎 上智大学, 文学部, 教授 (00339574)
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研究分担者 |
豊田 光世 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (00569650)
村瀬 智之 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00706468)
一ノ瀬 正樹 武蔵野大学, グローバル学部, 教授 (20232407)
直江 清隆 東北大学, 文学研究科, 教授 (30312169)
山田 圭一 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
望月 太郎 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50239571)
梶谷 真司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50365920)
齋藤 元紀 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (50635919)
上村 崇 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (50712361)
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 哲学教育 / 初等・中等教育 / 高等教育 / 社会教育 / 市民教育 / 哲学的対話 / 対話的で深い学び / 日本哲学会 |
研究実績の概要 |
本研究は、哲学教育を、高等教育における専門教育や教養教育の現場のみならず、初等・中等教育の現場や現代社会のさまざまな現場で活用する意義と方法とを研究し、現代社会の課題に応えることのできる哲学教育の基盤を構築することを目的とする。そのため、本年度は、以下の四つの課題に応えるべく、研究を遂行した。 課題1:初等・中等・高等教育において哲学教育がもちうる意義を明確にし、それに資する教育方法を開発し、その効果を明示する。 課題2:市民教育・社会教育において哲学教育がもちうる意義を明確にし、それを資する教育方法を開発し、その効果を明示する。 課題3:上記の哲学教育に必要とされる指導者の資質や能力を明らかにし、その養成方法を開発する。 課題4:哲学的対話を中心とする哲学教育と伝統的な哲学教育・研究との相互関係を明確にする。 以上の課題を果たすため、代表者・分担者各自がすでに実践している学校教育における対話を中心とする哲学教育(東京都内と被災地を含む日本各地)を継続するとともに 、広く同種の実践例およびそれらに関する理論的研究を調査した。特に、新設の教科「道徳」(小・中学校)については公開研究会(2月)を、新設の教科「公共」については日本哲学会で公開ワークショップ(5月)を開催した。また、海外の研究・実践者二名(ブラジル及びオーストラリア)を招聘して、公開講演会・ワークショップ・学校訪問(5月)を行った。また、カンボジアおよびシンガポールの実践を調査するとともに現地の研究者・実践者との交流を深めた(2月)。さらに、世界哲学会議(北京8月)で東アジアの哲学教育に関するラウンド・テーブルを主催して各地域の研究者と意見交換するとともに、その他の分科会にも積極的に参加して世界各地の実践者・研究者と研究交流を行い、豊富な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1:初等・中等・高等教育において哲学教育がもちうる意義を明確にし、それに資する教育方法を開発し、その効果を明示する。これについては、東京都内および日本各地の多数の小学校、中学校、高等学校において哲学的対話の教育を実施し、経験知を積み、データを収集するとともに、それらに基づく理論的考察を行い、研究成果として発表している。また、この活動を通じて学校現場との良好な関係を築いて研究・実践の環境をさらに整備するとともに、授業実施に必要な進行役の養成も進んでいる。 課題2:市民教育・社会教育において哲学教育がもちうる意義を明確にし、それを資する教育方法を開発し、その効果を明示する。これについては、市民向けの哲学的対話のワークショップやセミナーを日本各地のさまざまな環境(地方創生、地域活動、被災地復興、企業、社会教育)で実施し、経験知を積み、データを収集するとともに、それに基づく理論的考察を行い、研究成果として発表している。また、この活動を通じて、各種市民団体との良好な関係を築いて研究・実践環境をさらに整備するとともに、哲学的対話実施に必要な進行役の養成も進んでいる。 課題3:上記の哲学教育に必要とされる指導者の資質や能力を明らかにし、その養成方法を開発する。これについては、課題1および2を遂行する中で、研究の資料は蓄積されているが、その分析と考察は、すでに遂行している分担者もいるが、研究組織全体としては三年次に集中的に行う予定である。 課題4:哲学的対話を中心とする哲学教育と伝統的な哲学教育・研究との相互関係を明確にする。これについては、課題1および2を遂行する中で、研究の資料は蓄積されているが、その分析と考察は、すでに遂行している分担者もいるが、研究組織全体としては三年次に集中的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において研究は順調に進んでいるので、二年目以降も同様に四つの課題を果たすべく研究・実践を継続していく。さらに注力すべき点として、本研究を広く教育、職業、社会の現場に還元する方途を考案すること、具体的な教育方法と理論的な考察との連関を密にすることがあげられる。前者の具体例としては、研究成果を学術的な形式だけでなく、一般の人々にも理解しやすい形式で公表すること、初等・中等教育の教科書や学校現場や職業現場などで使用するハンドブックを作成することなどがある。これら二つの課題は、分担者レベルではすでに開始されているが、研究組織全体の重要課題として取り組む必要があると考える。 さらに視野に入れるべく浮上した課題として、新たに初等・中等教育に導入された「総合的な探求」における哲学教育の活用の実践・研究がある。実際、「総合的な探求」における哲学的対話には現場でも期待が高まっており、それに対応する教育方法の研究とそれを実施することのできる人員の養成は急務であると考えられる。そうだとすれば、最終年度に実施する予定の課題3の成果を待たず、とりあえずこれまでの実践知を生かして哲学的対話の進行役を養成することを検討することにも一理ある。状況を注視しながら、適切に対応したい。
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