研究課題/領域番号 |
18H00621
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
村田 裕和 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10449530)
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研究分担者 |
和田 崇 三重大学, 教育学部, 准教授 (10759624)
鴨川 都美 久留米工業高等専門学校, 一般科目(文科系), 准教授 (20757546)
鳥木 圭太 立命館大学, 文学部, 助教 (30749396)
足立 元 二松學舍大學, 文学部, 講師 (40532487)
内藤 由直 立命館大学, 文学部, 准教授 (60516813)
泉谷 瞬 大谷大学, 文学部, 講師 (10802845)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロレタリア / 文化運動 / 徳永直 / 小林多喜二 / 貴司山治 / 松本克平 / 地方 / 演劇 |
研究実績の概要 |
2019年7月6日より8月18日まで、市立小樽文学館を会場として,企画展「いまプロレタリア芸術が面白い!知られざる昭和の大衆文化運動」を開催した。この展示会は、昭和戦前期プロレタリア文化運動資料研究会が、2017年に刊行したDVD版資料集『昭和戦前期プロレタリア文化運動資料集』(丸善雄松堂)および、論集『革命芸術プロレタリア文化運動』(森話社、2019年)の研究成果を元として、150点以上の資料を展示する大規模な企画展となった。開催にあたっては、市立小樽文学館との共催として同館の全面的な協力を得るとともに、法政大学大原社会問題研究所の協賛を得て実現することができた。また、札幌大学図書館にも多大な協力をあおぎ、同館所蔵の松本克平コレクションの多くを出展いただくことができた。さらに、日本近代文学館からも貴重な資料をお借りすることで実現することができた。 資料展の開催にあたって、本プロジェクト予算を活用して図録(日本語版・英語版)を作成し観覧者に無料配布した。展示資料の選定及び図録解説の執筆には、上記研究会メンバーのほぼ全員がかかわった。また、同期間中、3回の催事を実施した。下記の通りである。講演会①:7月15日(月・祝)伊藤純「駆け抜けていった人・多喜二の後ろ姿」、上映会:7月20日(土)足立元『山本宣治告別式』『第12回東京メーデー』ほか(全6編)、講演会②:8月10日(土)村田裕和「再発見、昭和の大衆文化運動」 2019年8月17日(土)に第7回研究会を北海道教育大学札幌駅前サテライト開催した。15名が参加、5名の研究報告がおこなわれた。また9月28日(土)に比較文学会関西支部(立命館大学)において、「『革命芸術 プロレタリア文化運動』を読む――文学と文化運動の交差点から」と題するシンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は第1期からの研究成果を一般市民に紹介する企画展を開催することができた。この展覧会は、本研究プロジェクトにとってきわめて重要なイベントとして、実現に向けて準備をおこなってきたものである。関係各機関には様々に御高配をいただき実現することができた。また本年度には、定例の研究会に加え、比較文学会関西支部例会においてシンポジウムを実施した。内容は、【書評会】『革命芸術プロレタリア文化運動』(森話社、2019)司会:原佑介(同志社大学)、【講演】講師:伊藤純(プロレタリア文学研究者)「輸入思想“近代”受容の苦闘――小山内薫からプロレタリア文化運動まで」、【ミニシンポジウム】中川成美(立命館大学)、村田裕和(北海道教育大学旭川校)、和田崇(三重大学)、立本紘之(法政大学大原社会問題研究所兼任研究員)、ディスカッサント:杉淵洋一(愛知淑徳大学)、安藤陽平(立命館大学大学院) さらに11月には、日本近代文学会・昭和文学会・社会文学会合同国際研究集会の分科会において、「プロレタリア文化運動のモダニティ:脚色/共有される『太陽のない街』」と題するパネル発表をおこなった。上記村田、和田崇に加え、鴨川都美(久留米高専)、木村政樹(青山学院大学ほか)、司会神村和美(城西国際大学)で実施し、徳永直『太陽のない街』におけるアダプテーションの問題を中心に文学、演劇、映画、翻訳、歴史など多様な視点からそのインパクトを考察した。 2019年9月に、関西勤労者教育協会の調査(村田、和田、ほか協力者1名)、10月に、プロレタリア作家貴司山治旧蔵の写真フィルム・ガラス乾板の調査(村田、足立、伊藤ほか協力者1名)を実施した。これらの研究活動により、本研究プロジェクトは、おおむね予定通り進行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
第3年目となる2020年度は、資料調査、研究会、2021年度に実施予定の国際シンポジウムの準備、DVD版資料集を読む会への協力、WEBコンテンツの作成を実施する。①資料調査については、あきた文学資料館、関西勤労者教育協会、貴司山治旧蔵写真資料の継続調査を中心に行う予定である。②通例の研究会を9月頃に予定している。③他のプロジェクト研究と共同して2021年度に国際シンポジウムを開催したいと考えている。④2018年度から始まっている「昭和戦前期プロレタリア文化運動資料集を読む会」との連携をさらに充実したものとしていく。⑤ホームページの作成及びそこでの情報発信に努める。また同ページを活用した研究の活性化方策について検討する。 現在のところ、プロレタリア文化運動に関する用語集(キーワード集)などを作成することを検討中である。この分野の研究の蓄積は相当進んでいるものの、一般向けの情報発信がきわめて少なく、閉鎖的な研究領域となってしまっていた。文学研究者は積極的に文学以外のテーマにも取り組み、また、他分野の研究者を招待して交流を図っていく必要がある。その基盤はこれまでの研究活動である程度築かれているが、そうしたネットワークを具体的に可視化し、研究成果をオープンにしていく場としてオンラインでのワークスペースを構築したい。
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