研究課題/領域番号 |
18H00628
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高岸 輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80416263)
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研究分担者 |
津田 徹英 青山学院大学, 文学部, 教授 (00321555)
藤原 重雄 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (40313192)
加須屋 誠 京都市立芸術大学, 芸術資源研究センター, 客員研究員 (60221876)
鈴木 親彦 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任助教 (60803434)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 14世紀 / 絵巻 / 仏教説話画 / IIIF / 肖像画 / 真宗美術 |
研究実績の概要 |
本年度の最大の成果は、加須屋『仏教説話画論集』下の刊行である。全10章からなる本書は、12世紀から14世紀を対象とするが、特に「笠置曼荼羅小論」「本土寺蔵「観音経絵」小論」「十三世紀美術論」「十四世紀美術論」では、鎌倉時代の大画面仏教説話画の主要作例についての徹底した考究が行われるとともに,13世紀から14世紀の美術史を、公武や聖俗によるパトロネージ論、仏画とやまと絵の様式論、絵師・絵仏師の作家論を融合し、広い時間的視野から俯瞰した。 髙岸は、「中世絵巻の〈作者〉とその基盤―「春日権現験記絵巻」と古代宝蔵の再生をめぐって―」において、鎌倉時代後期の西園寺家周辺で、平安期の宝蔵の楽器が再生され、春日社に奉納された事例から、同家が制作させた「春日権現験記絵巻」の様式に平安末期の復古が想定されることを指摘した。また、「中世絵巻の〈作者〉とその基盤」(『〈作者〉とは何か』所収)は、初期の足利将軍家(足利尊氏、直義、義詮)が畿内・九州の寺院に奉納した仏像が、奉納者と等身大であったという記録から、等身大の神護寺三像(「伝源頼朝像」「伝平重盛像」「伝藤原光能像」)の像主が足利尊氏、直義、義詮とする説を補強する見解を示した。「「粉河観音縁起絵巻」七巻本の成立圏」は、初期の足利将軍による粉河寺信仰と14世紀末における七巻本絵巻の成立事情を考察した。 藤原「東寺本『弘法大師行状絵巻』の披覧記事」(『造形のポエティカ』所収)は、14世紀末に成立した基準作例が、その後、中世を通じてどのように閲覧され、宝物としての価値を形成したかを文献の精査から明らかにした。 津田は、近江地方に現存する14世紀の真宗系作例の調査と報告を継続中である。 鈴木・髙岸は、IIIFの画像を活用した絵巻の部分比較ツールの開発を行い、AIを用いた顔貌の自動認識による処理についても国際共同研究を加速している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により、「遊行上人縁起絵巻」諸本の調査や、海外での作品調査などが延期となっており、一定の影響は受けているものの、研究成果の発信はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり、これまでの成果を包括する研究会を開催する予定である。また本科研の成果を踏まえ、コロナ禍で延期となった調査の可能性を検討するとともに、次期の科研申請に向けて、人的な研究体制を拡充させる予定である。
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