研究課題/領域番号 |
18H00629
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 聰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50293113)
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研究分担者 |
板倉 聖哲 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00242074)
塚本 麿充 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (00416265)
高岸 輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80416263)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 美術史 / 宝物 / 比較美術史 / 収集 |
研究実績の概要 |
研究協力者のG.ヴォルフが春に来日し、熊野の聖地を共に回り、研究会を開催した。聖地や宝物の形成の根幹に人間と自然との「対話」がある、との氏の指摘は反響を呼び、引き続き調査・検討を行なうこととなった。また氏と2020年秋に欧州で宝物に関する研究集会を行なう準備が開始された。代表者は、ハーバード大・名古屋大共催「像内納入ワークショップ」に参加したり、新宮市で国際熊野学会との共催による地中海学会大会を企画・運営するといった活動を通じて、宝物の比較研究についての隣接分野の研究者の関心を高めるとともに、積極的な研究交流を推進した。日本建築史家の研究協力者(松崎照明)とは、国内外の調査を共にし、相互比較の可能性を追求し、新たな視点を数多獲得できた。例えば、各種宝物調査を行なった結果、日本の宝物には中央からの寄進宝物と寺社所縁宝物の二種があるが、熊野三山とその他の寺社では宝蔵、堂蔵での収納の様相や開示の方法が異なる可能性が浮かび上がった。 中国美術班(板倉・塚本)は、国内外の機関で中国絵画を幾つか悉皆調査を行い、模本等の調査からもイメージの流通経路、具体的な事例をめぐって各々の時代における絵画史観が明らかになった。また、清朝の宮廷宝物およびその都市図の制作について、鑑賞者と設置場所の問題から考察を進めると共に、および清朝の皇帝コレクションと日本との交流や、徳川将軍家コレクションとの関係についての調査研究等をおこなった。日本美術班(髙岸)は、中世後期における杭州と西湖のイメージの広がりを絵巻等の絵画から探った。琵琶湖畔の寺院を、西湖畔の寺院になぞらえ、その風景を理想化して絵巻に描き、これをその寺院に奉納することで二重の神聖性を得ようとしたことを指摘した。また、三条西実隆による天王寺・高野山巡礼の記録を分析し、彼が拝見した寺社の宝物由来と、同時代における寺社復興・勧進活動との関わりを述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が所属部局の執行部の一員となってしまったため、その研究活動は当初の予定よりは制限され、若干の変更は余儀なくされたものの、研究分担者・協力者は当初の予定以上に順調に研究調査を進めており、総体においてはおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に海外において国際研究集会を開催し、本研究のそれまでの成果を国際発信するとともに、海外研究者との情報・意見交換を推進する予定であり、今年度は鋭意その準備に取り組むことになる。
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