研究課題/領域番号 |
18H00637
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
小西 潤子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (70332690)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 三線 / 沖縄県 / 楽器製作 / 黒木 / 生態音楽学 / 地域文化 / 伝統工芸品 |
研究実績の概要 |
「くるちの杜プロジェクト活動調査」については、イベント「くるちの杜100年音楽祭」(2019年9月)に参加し、情報収集した。その際、James R. Edwards 博士 (SINUS, ベルリン)と合流することができ、本調査研究における協力に合意を得た。その後も、将来的な共同研究発表、共著の執筆などについて、意見交換を続けている。また、同プロジェクトの協力による「宮沢和史氏プロデュース 唄めぐり・シマ旅 久米島篇」(2020年1月)に参加し、参加者へのアンケート調査を行った。その結果、参加者の94%が宮沢氏のファンであること、37%は読谷村の植樹や草刈りにも参加していること、26%が今回以外のくるち植樹ツアーにも参加していること(重複回答可)がわかった。一方、43%が初めてのくるち植樹ツアー参加者であった。このことから、改めて「くるちの杜プロジェクト」が宮沢氏のファン中心に広まっていることが確認できた。この現状に対して、沖縄県三線製作事業協同組合としては、プロジェクトの持続可能性のために宮沢氏への依存のみによらない活動展開を探る必要性を強く認識していた。久米島では、中村一雄(人間国宝)氏とも合流した。中村氏への聴き取りによって、久米島の三線愛好家らが10年前独自にくるち植樹をしていたことがわかった。その場所を散策したところ、くるちの苗木は他の草木に埋もれている状態であり、定期的な手入れの必要性が明らかになった。 国内少量生産楽器については、『邦楽ジャーナル』関係者へのインタビューを行った。その結果、邦楽器の場合は、楽器生産者を集結すること、楽器の素材の確保、職人の育成などすべてが三線以上に厳しい現状だとわかった。一方、早々と新素材の開発も行われている点については、三線の製作現場にも参考になりうると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた内容は、1)楽器製作事業者の現状と課題把握、2)楽器製作事業者間での情報共有、3)くるちの生態環境保全とプロジェクト活動体制持続の検討であった。1)については、三線以外の国内少量楽器製作の現状について、『邦楽ジャーナル』関係者へのインタビュー及び同誌の各特集号を収集した。これにより、邦楽器製作現場が抱える深刻な問題について知ることができた。2)については、邦楽器製作の現状に加えて、小笠原諸島における外来種駆除と楽器製作プロジェクト関係者の活動について、沖縄県三線製作事業協同組合に情報提供した。3)生態環境保全とプロジェクト活動体制持続の検討については、2019年12月に沖縄県三線製作事業協同組合が行ったブランド三線や伝統工芸品の電子管理システムのお披露目の場でもあった展示即売会に通い、関係者へのインタビューより当事者意識を明らかにした。また、2020年1月「宮沢和史氏プロデュース 唄めぐり・シマ旅久米島篇」参加者へのアンケートによる参加者意識を把握することができた。研究成果報告については、2019年7月国際伝統音楽学会(ICTM, 於:バンコク、チュラロンコーン大学)で口頭発表したほか、James R. Edwards 博士との共同執筆作業の準備をし始めることができた。さらに、本研究テーマに関連して、マンチェスター大学の Rupert Cox 准教授と沖縄の三線文化と音にかんして意見交換し、ドイツで出版する計画が始まった。さらに、地域研究画像デジタルライブラリー支援事業(国立民族学博物館主催)に採択されたことで、山口修写真コレクションのデジタル化が可能になり、その中から1960年代奄美大島の三線を発見したことで楽器制作技術の歴史的変化の一端を見られた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画内容は2020年2月までにほぼ遂行できた。しかし、3月に入って新型コロナウィルス感染症蔓延により、次第に移動制限が始まった。来年度からは、関係者と課題を共有しネットワークづくりを始める計画である。来年度、新型コロナウィルス感染症の第2次、第3次感染拡大が生じると、県をまたいでの人の往来が制限される可能性がある。その場合には、インターネットやテレビ会議システムを活用し、遠隔地との情報交換を行うこととする。また、3月に予定していたインドネシア・ジョクジャカルタでの研究発表(招聘)が中止となり、Jamese R. Edwards 博士との共著の出版計画も現在停止しているため、来年度については研究成果発表計画を見直す必要がある。
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