ローカルな楽器製作者は、材料枯渇や低価格の海外産楽器普及に伴う製造技術伝承の危機に瀕している。さまざまな自然の素材で製作し、文化的な音表現を行う楽器は、生物多様性や文化の持続性に支えられているため、その存在自体が地球規模の環境問題のバロメーターでもある。本研究は、沖縄県内の三線製作を対象とし、従来の民族音楽学では扱ってこなかった音楽、文化、自然環境の複合的な問題を扱う生態音楽学 ecomusicology という新しい学問領域における実践的な方法論を示したことに学術的意義がある。同時に、地域に密着した応用民族音楽学研究であり、地場産業の活性化と新たな価値づけという点で、社会的意義がある。
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