研究課題/領域番号 |
18H00650
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
釜谷 武志 神戸大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30152838)
|
研究分担者 |
佐竹 保子 東北大学, 文学研究科, 教授 (20170714)
林 香奈 京都府立大学, 文学部, 教授 (30272933)
柳川 順子 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (60210291)
狩野 雄 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (80333764)
佐藤 大志 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90309625)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 楽府 / 音楽 / 祭祀 |
研究実績の概要 |
『宋書』楽志二所収の郊祀歌・宗廟歌のうち、傅玄「晋郊祀歌」、顔延之「宋南郊雅楽登歌」、謝荘「宋明堂歌」、王粲「魏兪児舞歌」を対象にして、研究代表者・分担者の全員で、本文の校定、詳細な訳注、達意の訳文の作成を行い、「『宋書』楽志二訳注稿(一)」と題して『未名』三十七号に掲載し公表した。底本には百衲本を用い、中華書局の新旧二種の点校本などを参考にした。 並行して行なっている個々の研究成果については下記の通りである。 楽府の全般的な特徴として、音楽性以外に模倣性と虚構性があることを指摘した。徒詩が現実に密着した作品であるのに対して、楽府は特定の人物や事件、場所を設定してうたう、虚構の作品であり、あるいはもとの歌に託してうたう模倣の作品であるという構造を明らかにした。このように定義することで、楽府において率直な恋愛感情や反戦的な政治批判が多く見られる現象を、合理的に解釈し説明することが可能になる。模擬詩に代表される作品が模倣性、虚構性をもつことは明らかであろう。 徒詩を創作するようになった詩人の一人である魏・曹植と、楽府の創作に秀でた晋・陸機との関わりは従来から検証されていたのに対し、楽府作品を残していない晋・潘岳と曹植との接点についてはほとんど研究されてこなかった。両者に共通して見られる「韻」という要素が、ともに得意とした哀誄などの追悼文にも求められる要素であること、潘岳が曹植の独創性の高い表現や発想と「韻」という側面を継承した詩人であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『宋書』楽志二冒頭から所収の雅楽を対象に、研究代表者・分担者の全員で、本文の校定、詳細な訳注、達意の訳文の作成を始めて、完成した部分を「『宋書』楽志二訳注稿(一)」と題して『未名』三十七号に掲載し公表した。傅玄「晋郊祀歌」、顔延之「宋南郊雅楽登歌」、謝荘「宋明堂歌」、王粲「魏兪児舞歌」で、いわゆる郊祀歌と宗廟歌の範疇に属する。 併せて進めている個々の研究成果もそれぞれ、『文選』の楽府、曹植と潘岳、陸機の楽府などについて公表を始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
『宋書』楽志二所収の雅楽を対象に、継続して本文の校定、詳細な訳注、達意の訳文の作成を行う。宗廟歌等の祭祀歌、元会儀礼等の儀式歌が中心になる。 併せて個々の研究を進める。具体的には楽府・徒詩の制作方法を明らかにすること、その方法について詩人たちがどのように考えていたかの文学意識について、明らかにする。 晋代に演奏された楽府をとりあげて、それらが前代の三国の詩人をどのようにとらえ、どのように継承していたのかを明らかにする。
|