研究課題/領域番号 |
18H00663
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
新谷 忠彦 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90114800)
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研究分担者 |
山田 敦士 日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (20609094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カレン語 / ドーラン語 / タオクウ語 / ディクロン語 / プーロン語 / カブラ語 / カタン語 / カロンデイ語 |
研究実績の概要 |
本年度は、予定していた海外での補充調査は、新型コロナ感染症が終息せず、実施することができなかったが、現地調査を行わなかった分、時間に余裕ができたため、予定していた以上の言語データの整理・公開を進めることができた。本年度中に公開できた言語資料は、ドーラン語、タオクウ語、ディクロン語、プーロン語、カブラ語、カタン語、カロンデイ語の7言語である。いずれも「タイ文化圏」の中のミャンマー側で、ごく少数の人たちによって話されている危機言語で、これまで全く知られていない言語ばかりである。これらの言語はいずれもカレン系の言語で、その歴史音韻論を研究する上では大変重要な言語である。カレン系の歴史音韻論研究で長年論争となっているテーマに、カレン祖語に3つ目の開音節声調があったかどうかという問題がある。この点に関して、ドーラン語とタオクウ語には3つ目の独立した開音節声調が現存していることから、カレン祖語には3つ目の開音節声調があったことが確実になった。また、カタン語は無声初頭音を持つ音節に気息声調が現れている点でかなり特殊な言語である。音声的には気息声調は有声初頭音を持つ音節にしか現れないが、こうした声調が、いったん音韻論上の声調素となってしまえば、当該言語の声調体系の中で自由に交替できることを裏付ける資料となっている。 新型コロナ感染症の世界的流行は当初計画では全く考えられなかったことで、海外現地調査ができない点が障害となってはいるが、こうした不都合な環境の中ても、すでにタイ文化圏の38言語の基本データを整理・公開しており、そのほとんどが未知の言語ないしは科学的データのない言語で、「タイ文化圏言語事典」編纂のための基盤固めを目的とする本研究計画は着実に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、海外現地調査ができなかった点はマイナスであるが、一方で、その分時間に余裕ができたため、予定した以上の7言語もの資料を整理・公開することができ、その点ではプラスである。また、本年度に公開できた言語の中には、カレン諸語歴史音韻論研究に極めて重要な言語が含まれており、この点でもプラスが大きい。従って、プラス・マイナスを勘案して、おおむね順調と考えてよいのではないかと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの問題が非常に不確定であるが、今年度中にはタイ文化圏の一部で海外現地調査ができるようになるのではないかと考えている。ただ、コロナが完全に収束する状況は考え難く、今後も、これまでに収集できた言語資料の整理・公開が中心となることが想定される。これまでに収集できている言語データはまだ大量にあり、「タイ文化圏言語事典」編纂のための基盤づくりを粛々と進めていく。
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