研究課題/領域番号 |
18H00668
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
佐野 直子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (30326160)
|
研究分担者 |
糟谷 啓介 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特任教授 (10192535)
石部 尚登 日本大学, 理工学部, 准教授 (70579127)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 「パトワ」概念 / フランス語圏 / 概念受容の地域差・越境 |
研究実績の概要 |
2020年2月からの新型コロナ感染症の拡大のため、2020年度の研究計画は大きく変更をせざるを得ない状況となった。オンラインでの会合や国内学会の発表は行いつつ、2020年7月にイタリア・クーネオ市で開催されるはずであった国際オクシタン語学会にて、研究代表者・分担者・協力者で一部会を形成し、研究成果を発表することを計画していたが、学会は1年延期後、2021年7月に講演・シンポジウム部分はオンライン開催、一般発表の部は中止となった。 オンラインでの会合、国内学会での発表投稿は続けていたが、フランス国内を超えた幅広い「パトワ」概念受容の地域差について、イタリアアルプス山間部(オクシタン語・フランコプロヴァンサル語地域)の現地研究者や活動家を交流することで、多様な地域における「パトワ」概念の比較を行うことが本研究の遂行上必要と判断した。そこで2022年8月23日に、イタリアのドロネーロ市の公設団体Espaci Occitan(オクシタンセンター)にて、学会で発表予定だった内容の講演会 LO JAPON RESCONTRA L’OCCITANIA : Difusion e variacion de la paraula PATOIS を開催し、現地活動家や研究者との交流を行った。 議論の過程で、決して広くはないアルプス山間部地域においても「パトワ」概念の受容には大きな違いがあり、それは書記言語としてのフランス語の使用の歴史があるかによってイタリアのオクシタン語内でも大きく異なること、その一方で、「パトワ」概念の元で使用されてきた地域の話しことばの意識は村単位、どころか村内部においても標高差で分かれるほど細かく分割され、オクシタン語とフランコプロヴァンサル語地域の区別は付けられていないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年8月に実施したイタリアでの講演会は、夏休み中にもかかわらず多くの方に参集いただき、新たなな知見や知己を得るなど、充実した研究交流を行うことができた。その後のキゾーネ谷での活動家との交流は地元紙で特集記事が組まれるなど、現地でも注目された。「パトワ」概念のイタリアにおける不均衡な受容(オクシタン語地域でも受容した地域としていない地域がある一方で、受容した地域においては、フランコプロヴァンサル語とオクシタン語の区別がつけられていない)が確認できたことは、本研究においても重要な成果であるといえる。ただし、これらの知見を得られたことから、計画していた日本での国際シンポジウムの開催については、想定していた招聘者の変更を余儀なくされた。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時においては2021年度に計画されていたシンポジウムは、「パトワ」概念についての(広い意味での)フランス語圏研究者や現地活動家と、日本国内における「方言」研究者、さらには「方言」とされがちである琉球諸語についての現地活動家、さらにはフランス語圏を超えた「パトワ」という名称の広がりについて研究している国内外の研究者を招聘して、マイノリティ言語の存在の様態そのものの多様性について幅広く対話することを目指すものであった。新型コロナの状況が徐々に落ち着き、2022年度夏にはようやく所属機関から海外出張の許可が出たことで、その準備に本格的に着手しようとしたが、招聘者の変更の必要性が判明したこともあり、2023年度への事故繰越を申請した。
|