本研究は新型コロナウィルスの蔓延で、2020年度および2021年度はインドへの渡航ができなかったため延長した。幸い、2022年度9月になって、インドへの渡航ができるようになったため、研究代表者の長田は、2022年10月から1か月、また2023年2月から1か月、海外共同研究者がいるフィールド調査の拠点となるラーンチー大学へ行くことができた。ただし、アスル語やビルホル語の話されている地域でのフィールド調査については、代表者の所属する総合地球環境学研究所の内部規定により、現地に赴くことができなかった。そこで、現地の海外共同研究者であるビクラム・ジョラ博士からビルホル語調査の概要を聞き、グンジャル・ムンダ氏からアスル語の調査概要を現地で発表してもらった。本研究の成果として、危機言語である対象言語について、ビルホル語については、語彙調査リストを完成させ、アスル語については、アスル語によるテキストと辞書の草稿を作ることができた。 また、対象言語であるコルワ語については、研究分担者の小林が担当したが、ある程度の文法書の草稿をまとめあげ、これから公刊に向けて出版社との交渉をおこなっている。 さらに、本研究では現地のムンダ語を教えている若手の研究者への教育プログラムを2023年3月に1週間おこなうことができた。これまでムンダ語の教科書がしっかりしたものがない状況で、至急、新しい教科書の執筆し出版することが重要であるという認識で一致した。そのため、研究代表者らが東京での言語研修用に作った教科書の英語版A Course in Mundariをヒンディー語出版すべく、鋭意努力中である。本研究によって、若手の研究者との交流を実現し、今後の研究の足掛かりをつくることができたと自負している。
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