研究課題/領域番号 |
18H00677
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
吉川 達 佐賀大学, 国際交流推進センター, 講師 (70599985)
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研究分担者 |
佐々木 良造 静岡大学, 国際連携推進機構, 特任准教授 (50609956)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 多読 / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本年度の計画としては、多読読み物の作成、朗読の推進、語いリストの作成、日本語教育関係者への多読に関する理解の促進、多読の効果の検証を挙げていた。 これらのうち読み物作成については、「日本語ちょっとストーリーズプロジェクト」と称して、集中的に読み物作成を行った。これは、研究代表者らが作成に携わった『どんどん読める! 日本語ショートストーリーズ』(アルク)と同じような気軽に読める読み物群の作成を目的に、3名の日本語教育専門家に協力を仰ぎ、研究代表者、分担者、協力者を含めた6名で50作品の作成を目標にしたものであった。会議と検討を重ね結果的に44作品を作成し、全てを本事業で運営するウェブサイト「たどくのひろば」で無料公開した。プロジェクト終了後も、作成に関わった3名の日本語教育専門家に読み物作成の継続を依頼し、約40作品を追加で作成した。本年度末時点で「たどくのひろば」には、127作品を無料で公開している。 読み物作成と同時に、公開済みの読み物に朗読の音声を加える作業を行った。朗読に際しては、研究代表者の所属する大学の学生で朗読経験者や放送部所属経験者に協力を依頼し、朗読を行った。完成した朗読音声も読み物とともにウェブサイトで公開している。 また、読み物作成の際の一助となることを目指し、レベル別の語いリストの作成を開始した。日本語教育において単語の語いレベルを判断する際には、旧日本語能力試験の出題基準が参照されることが多いが、版が古い。そこで、少なくとも初級前半、後半、中級前半程度の語いレベルの判別ができるように、現在公刊されている教科書を取り上げ、そこで使われている語をリスト化した。本年度に対象としたのは国際交流基金著『まるごと』シリーズの入門、初級1、初級2、初中級レベルの計7冊である。 その他、国内外のセミナー等において講演し、多読についての理解を広めることに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画としては、多読の読み物作成、朗読の推進、語いリストの作成、日本語教育関係者への多読に関する理解の促進、多読の効果の検証を挙げていた。 これらのうち読み物作成については、プロジェクトを立ち上げて集中的に読み物作成を行い、プロジェクト後も継続的に読み物作成を行って、最終的には目標としていた50作品を上回る約90作品をウェブサイト上に公開することができた。それと並行して行った語いリストの作成も、『まるごと』シリーズのリスト化が終了し、さらに旧日本語能力試験の語いのリスト化も行った。また、朗読については6名の日本人学生の協力のもと、65作品の朗読が終了している。 日本語教育関係者への多読の理解の促進については、出版社主催のセミナー、立命館アジア太平洋大学におけるFD研修、バルセロナ自治大学で行われた「JF日本語ネットワーク特別プログラム日本語教育セミナー」の、国内外の3つのセミナーにおいて研究代表者が講演し、多読について理解が促進されるよう努めた。 これらは概ね順調に進んだが、多読の効果の検証については、新型コロナウィルス感染症の影響が続く中、実施できなかった。本調査は、日本語学習者に対面で本を読んでもらうという活動が含まれるため、留学生が十分に来日できなかった本年度に実施できなかった。海外にいる研究協力者に調査を依頼することが代替案として挙げられるが、海外の状況も予断を許さず、協力者の国では都市のロックダウンと解除が繰り返され、大学も最後までオンラインで実施された。このような状況から効果の測定に関する調査は次年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本事業の研究の最終年度にあたり、これまで行ってきた読み物作成を継続しつつ、成果のまとめと総括を行う。 具体的には、200作品を到達目標に多読の読み物の作成を引き続き行うとともに、朗読音声の作成も引き続き行う。これまで作成した読み物は130作品を超えるが、作成した作品をまとめて小冊子化し、多読を実践する日本語教師や多読に関心のある日本語教師に配付する。この小冊子を実際の多読現場で利用してもらうとともに、ウェブサイト「たどくのひろば」に誘いウェブサイトの認知度を高め、利用を促進する。 また、本年度作成した語いリストを整理しウェブサイトで公開することで、誰でも使える共有資源となるようにする。加えて、これまでの読み物作成の際に得た知見をまとめ、読み物作成のための指針として公開し、読み物作成に興味のある日本語教師が独力で読み物作成できるよう援助する。 さらに、読み物作成の方法や、ウェブサイトの使い方、授業での実践のし方を紹介するためのセミナーを1回、多読を含めた今後の読解教育についての可能性を提案するような未来志向のセミナーを1回開催し、本事業に関係する者と日本語教育関係者が意見交換を行い、日本語教育界の多読や読解教育についての理解の深化を目指す。 過去2年間、新型コロナウィルス感染症の影響により、多読の効果の検証が滞っている。これについては、2次策、3次策を含めて対策を検討し、何らかの形で実施、できる限り速やかに関連学会等で成果を報告することを目指す。
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