研究課題/領域番号 |
18H00683
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 毅 東北大学, 東北大学 高度教養教育・学生支援機構, 特任教授 (30185441)
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研究分担者 |
佐藤 健 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402242)
坂本 泰伸 東北学院大学, 教養学部, 教授 (60350328)
山口 高領 秀明大学, 学校教師学部, 専任講師 (60386555)
江藤 裕之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70420700)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | e-ラーニング / 英語学習者データ / オンライン授業 / 高大接続 / 英語読解力指導 |
研究実績の概要 |
令和2年度(2020年度)は、人類がこれまでに経験したことのない世界規模のCOVID-19禍に伴い、日本国内でも人流も含めた人間同士の物理的接触の劇的な減少、そして学校教育現場における大きな混乱が発生した年度であった。大学でのオンライン授業の大幅な導入に加えて、高等学校でも不十分ながらも感染症対策に伴って授業形態の大きな変更が見られた。また、授業実践の形態のみならず、教員間の研修の形式や、本研究のロードマップ上で精密に設定したシンポジウムや公開セミナーの在り方が極めて大きな影響を受け、特にインターネット通信環境等の不十分な高等学校所属の教員や生徒とのインタラクションに困難をきたした。 大学入試センター試験に代わる大学入学共通テストに関連した所謂、英語外部試験の導入が令和2年11月の文科大臣発言等の影響によって見送られた結果、本研究設計・及び開始当初に企図していた「大学入試改革を高大連接の英語教育の改革にとっての絶好の契機として捉える」という発想そのものが現実味を失う事となったことは事実である。 このような困難な状況下にあっても、研究チームでは、独自に開発した複数のe-ラーニングシステム個々の性能の向上と、それらの有効な組み合わせによる教育・学習効果向上のための検証を積み重ねた。研究チーム内での打合せや協同作業をオンライン環境で継続的に活発に行うための会議通信環境を整備し、一方で大学のオンライン授業での実践を通して得られる学習者データの分析を一層進めるための新しい解析システムも開発した。 国際学会での研究発表等を行ったが、これらは全てオンライン形式での参加となり、現地の研究者との打合せ及び英語母語話者学生を被験者としたシステムの実証研究などが不可能となり、外国旅費の執行が困難となったために、次年度以降への繰越し申請を行い、研究の継続性を担保するよう心掛けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までは概ね当初計画通りのスケジュールでシステム開発研究及び協力関係にある大学や高等学校での授業実践への応用と普及を促進してきた。しかし2020年頭からのCOVID-19感染症の拡大により、研究代表者・研究分担者所属の大学では全ての英語の授業がオンラインで実施されるという未曽有の環境変化に見舞われた。加えて特に公立高等学校等では、感染症対策に伴う一斉休講や、通常形式の授業の大幅な見直しを余儀なくされ、本研究が目指す「大学入試改革を契機とする教育・学習コンテンツを中心とした新しい高大接続の在り方の探求」の基盤となるe-ラーニングシステムの実践稼働と、これを実施し多くの学習者データを収集しながら、より効率的なEFL読解力養成指導を目指すための英語教員間の協働作業に大きな支障をきたすこととなった。 また、国内外での学会もそのほとんどがバーチャル開催となり、学会機関誌や国際ジャーナルへの論文投稿は行えたものの、現地会場に赴いてのプレゼンやコロキアム参加といった貴重な活動がほぼ全面的に制限され、このために年度内で計上していた旅費の執行が滞った。 実際の授業実践の場である教室での学習者の実態観察やシステム利用に対するリアルタイム性を伴った反応等の質的データの収集が不可能となり、e-ラーニングシステムを介して得られた学習者データという数値的な資料との統合的な分析・研究に大きな障害となったために進捗がやや遅れていると判断するものである。 協力関係にある高等学校に実際に出向いての、授業実践の場でのシステム利用促進と英語教員に対するハンズ・オン形式の公開セミナー等を定期的に開催する予定であったが、これもコロナ禍によってほとんど実施することが出来なかったという事も今年度の研究推進にとっての大きな制約となったことは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
TOEFL iBT Home Editionのようなリモート型のテストにおいても試験の公正性を担保する監督システムを参考にしつつ、EFL読解力養成訓練中の学生・生徒のより純正な思考・読解プロセスを明らかにしてゆく工夫を凝らさなければならない。 世界標準の英語運用能力測定テストで要求される「1分間に155単語前後」の速度での読解力を育成するには、平常の練習モードに加えて、対面式に匹敵するリモート環境での測定が必要となる。 このためには、可能な限りハイブリッド型授業実践を心がけ学習者の読解困難点がどのような指導によって解消されるのかを解明する必要がある。数名単位のグループ学習によるアクティブラーニング環境をオンライン授業の場でも構築する必要があり、このためにはGoogle classroomやMicrosoft Teamsのようなプラットフォームに対する技能をそれぞれの英語教員が高める必要があり、本研究チームも今後は、独自開発のシステムの利用促進に努めつつ、効果的な英語授業のオンライン提供のための支援を特に高等学校教員に対して継続することが必要である。 本研究プロジェクトはEFL読解指導に関する学習者データ収集を、独自開発したe-ラーニングシステムiBELLEs+(令和2年度に開発・運用開始)、IPCCA (iBELLEs+の出力解析専用に令和3年度に開発)、DREC-J等を活用して推進するものであるり、それらに搭載して提供する英文素材にはTOEFL開発・運営母体である米国ETSの許諾を得た真正マテリアルを利用するのが大きな特徴であるが、この仲介を継続している研究協力者が代表を務めるCIEE Japanがコロナ禍等の影響により解散し、事業規模を縮小して2021年6月にETS Japanとして起業した。協力関係の維持と、真正素材の安定的な利用のための交渉を続けなければならない。
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