研究課題/領域番号 |
18H00692
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
畑江 美佳 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (20421357)
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研究分担者 |
門田 修平 関西学院大学, 法学部, 教授 (20191984)
湯地 宏樹 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50290531)
ジェラード マーシェソ 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60403763)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リーディング / 文字指導 / 眼球運動 / ピクチャーカード |
研究実績の概要 |
小学校5年生から外国語が教科となり,「読むこと」「書くこと」が導入された。小学校6年間の間に起きる,生得的言語習得能力の低下とメタ認知能力の上昇に鑑みると,このタイミングで文字指導を始めることは,論理的に適切であると位置づけた。その上で,Reading(読み)= Decoding(ディコーディング)×Comprehension(理解)であることから,意味を伴った自然な読み方のできない主な原因は,このディコーディングの自動化が弱いことに起因しているとした。 本研究の目的の一つは,リーディング指導を開始する『適期』を明らかにすることである。2018年度には,音声情報から文字を介さずに直接意味内容の認知に至る発達段階から,メタ認知能力の高まりにより音韻符号化が可能になる移行時期(年齢),その特徴などを,視覚提示英単語(絵にその綴りが添えられているカード)を見る児童の目の動きから明らかにするとして,国立大学附属小学校1年生から6年生,計264名(男130,女134)に対して調査をした。2019年度,そのデータの分析をしたところ,以下の特徴が表れた。 ①音声の有無の影響:音声を伴わない視覚提示英単語を見ている時のほうが,文字を見る時間が長く,回数も多い。②視覚提示刺激の位置関係の影響:絵でも文字でも上にあるものを見る時間が長く,回数も多い。③学年の影響:学年が上がるにつれ文字を見る回数が増える。特に,4年生以降に文字への注意が有意に増大し,5年生以上で絵への注意が有意に減少する。 これらの結果から,文字指導をする場合,①絵と文字を提示してから,音声を少し遅らせて与えること,②ピクチャーカードを作成する際に,文字に目を向けて欲しい場合,単語の綴りを絵の上に持ってくること,などの工夫が考えられる。また,③の結果から,小学校4・5年生が文字指導を開始する『適期』であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度には,2018年度の調査結果の詳細を分析することができた。その中には,今後の小学校英語教育の中で「読むこと」をより正確に位置づけることに有効な結果が含まれていた。また,それを2019年8月に全国英語教育学会全国大会にて研究発表し,研究の成果を外部に発信することができた。 さらに,2018年度の眼球運動測定調査は外国語の授業で小学3年生から既に文字指導を行っている国立大学附属小学校での調査だったため,これを日本の小学生の特徴として一般化できないのではないかという指摘から,2019年7月に,公立小学校で同様の眼球運動測定調査を実施した。 しかしながら,これらの調査の詳細部分の検討や附属小と公立小との比較等は,1月以降の新型コロナウィルスの感染拡大により,国内での研究会のキャンセルや研究分担者及び研究協力者とのNYでの会議の中止から,より詳細な児童の文字への注視時期やその特徴の検討がやや遅れていることも否めない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究については,以下のようにする。 ①国立大学附属小学校(文字学習の経験有)での調査結果と公立小学校(文字学習の経験無)での調査結果とを比較検討し,文字を読もうとする行為が,学習によるものなのか,生得的なものなのかを明らかにする。また,それが何歳頃から始まるのかについても明らかにする。②「文字提示のみ」の方が,「文字提示+音声」より,文字注視が長く(時間),多い(回数)という結果が何年生で有意でなくなるか(あるいはずっと有意のままか)について調査及び検討すること。これにより,選択的注意により提示音声を排除して,「視覚提示語の音韻符号化」が自力でできるようになる時期を推測させてくれる可能性を探る。③絵でも文字でも上にあるものを見る時間が長く,回数も多いという結果から,ピクチャーカードに提示する文字(単語の綴り)を上に持っていくことを検討する。それによって,文字の認知が高まるかについて,調査方法を検討し,実際に教材を作成して実験をする。④学年が上がるにつれ文字を見る回数が増えること,特に,4年生以降に文字への注意が有意に増大し,5年生以上で絵への注意が有意に減少するという結果から,現在は5年生から開始される文字指導を,4年生から徐々に開始する方法やその効果について検証する。 これらの研究により,本研究の目的である,文字の『適切』な指導法や教材開発に着手する。
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