研究課題/領域番号 |
18H00702
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
中沢 葉子 (並河葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
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研究分担者 |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)
鳥山 純子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
吉村 真美 (森本真美) 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェミニズム / 近代家族 / 感情労働 / 女性 |
研究実績の概要 |
初年度であったため、フェミニズムの越境性について感情労働に注目しながら研究分担者がそれぞれ関連分野の研究動向の把握に努めるとともに、関連分野の研究者にも海外での研究動向の把握や共同研究の可能性を探るために海外調査や研究会開催の協力を仰いだ。 研究会としては、6月22日にPolitical Economy Sminarにて18世紀末から19世紀初頭にかけてイギリスで設立されたイギリスと海外双方を視野に入れたソーシャル・リフォームの団体について報告した。また、3月にはイギリスおよびアメリカでBritish Foreign Bible SocietyやBritish Foreign Anti-Slavery Societyなどの活動について調査した。7月に関西ジェンダー史カフェにて坂井博美氏を招いて日本における家事労働者のジェンダー観についての報告会を開催し、9月には研究チームメンバーが研究計画を報告し、全体計画との調整を行った。 海外調査も積極的に行い、代表者の並河が上記の通りイギリス、アメリカで現地調査を行ったほか、分担者の奥田はイギリスにてウォルタ・ブロンウェン氏と第2派フェミニズムの時代におけるブリテン、北アイルランド、アイルランドのフェミニズム運動について意見交換し、また、1960年代以降の北アイルランド、アイルランド女性史関係の資料収集を行った。鳥山は、エジプトにて、近代に入り、ヨーロッパとの接触によって女性たちの立場にどのような変化が起きたのかを検証するための現地調査を行った。また、アメリカの図書館に保管されている資料から近代日本女性の立場がどのように表象されているのかを探る研究を進めるために神戸大学の長志珠枝氏をアメリカでの現地調査に派遣した。 本研究にかかわる成果として中東世界の女性たちや18世紀の反奴隷制運動期の女性たち関する論文の発表も本年度の実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連分野の研究動向把握など、初年度に計画していた内容についてはおおむね順調に行うことができたと評価できる。 海外調査の成果もあり、並河が担当する西インド世界については、奴隷としてイギリス領西インドの送られた女性たちだけではなく、イギリス領インド洋世界においても奴隷として送られてきた女性たちが、奴隷制廃止にともなう労働環境の変化やイギリス的なジェンダー観が普遍的な理想像として掲げられていく中でどのようにそれを受容したのかについて具体的に検討する手掛かりを得ることができた。また、反奴隷制運動期の女性たちについて代表者の並河が論文を発表したほか、本研究をさらに発展させるためにイギリスにおいて現地調査を行うことができた。 また、中東についても鳥山が本研究にかかわる成果を論文や書評のかたちで発表するだけでなく、エジプトにおいて現地調査を行うことで、研究を深化させることができた。奥田も北アイルランドおよびアイルランドのフェミニズムについてイギリスで海外で文献調査だけではなく研究打ち合わせを関連分野の研究者と行うことができており、本研究にかかわる最新の研究動向の把握を順調に進めることができた。 このほか、大東文化大学の山口みどり教授をイギリスに派遣し、19世紀後半から20世紀にかけてのイギリスにおけるジェンダー観やミドルクラスの女性たちの立場の変化、フェミニズム運動との関連について、現在、イギリスにおいて進められている最先端の研究動向の把握するための協力を仰いだ。具体的な成果については、2019年度の研究会においてメンバーと共有する予定であるが、関連の共同研究を行ってきたエセックス大学のパメラ・コックス教授などと、今後も協力しながら研究を発展させていくための意見交換ができたことなどからも、研究の進捗はおおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当該科研がカバーする地域はイギリス本国を中心としてその植民地を広くカバーしている。このため、2019年度は、2018年度にメンバーそれぞれが把握に努めた担当地域についての研究動向を相互に共有していくこと、また、感情労働について経済系の研究者などが行っている研究についても情報を共有することに努める。そのために、科研研究会を2度開催することを予定している。 また、本科研の中間的な成果発信として、2020年度の西洋史学会大会において小シンポジウムの開催を予定しているため、2019年度はその準備を具体的に進めていく。シンポジウムにおいては、近代家族とフェミニズムの関係をイギリス本国と帝国それぞれにおける女性の立場、母子(親子)関係に焦点を当てて検証する予定である。 準備の一環として、2019年度は11月頃にイギリス帝国において西インド地域及びインド洋地域の奴隷の女性たちの立場が奴隷制解放期にどのように変化したのかを検討するセミナーの開催も予定している。本セミナーには、ロンドン大学のShihan de Silva教授など海外の研究者も招聘を予定している。 本科研メンバーや、2018年度研究協力者として海外に派遣した研究者の研究成果を共有するために開催する2019年度の本科研の研究会においては、イギリス本国の周辺地域であるアイルランド、北アイルランドや中東地域、環インド洋世界および西インド地域に焦点を当てたジェンダー研究という、日本においては研究蓄積が少ない分野について、報告の場を設ける。必要に応じて関連分野の研究者にも出席を依頼して成果を随時共有することにより、当該研究のオリジナルな研究成果を研究会メンバー以外にも積極的に発信する方法を探りつつ、関連分野の研究者と積極的に意見交換を行っていく。
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