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2020 年度 実績報告書

感情労働の地域・階級間比較にみる「近代家族」、フェミニズム思想の越境性とその限界

研究課題

研究課題/領域番号 18H00702
研究機関神戸市外国語大学

研究代表者

中沢 葉子 (並河葉子)  神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)

研究分担者 奥田 伸子  名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)
鳥山 純子  立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
吉村 真美 (森本真美)  神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードフェミニズム / 女性 / 子ども / 人種主義 / 西インド / 奴隷 / アイルランド
研究実績の概要

前年度までの成果の中間発表として、2020年度の日本西洋史学会大会において「周縁からのフェミニズムの再検討ーイギリス女性たちに見るOur Storyとour storiesのはざまー」(2020年12月12日、大阪大学開催)とのタイトルで小シンポジウムを行った。
当シンポジウムでは、本プロジェクトのメンバーである並河、森本、奥田に加えて、コメンテーターに井野瀬久美惠を迎え、女性たちの間で必ずしも共感されることのなかった思いについて、三つの事例を検証することから検討した。
並河は19世紀のイギリス本国で反奴隷制運動にかかわった女性たちとイギリス領西インド植民地の奴隷の女性たち、森本はイギリス本国の子ども支援チャリティにかかわった女性たちと支援対象の少女たち、奥田は20世紀のイギリス本国においてブリテン島でフェミニズムにかかわった女性たちの反アイルランド感情とそれに対するアイルランド人女性労働者たちを取り上げた。
本シンポジウムにおいては、19世紀から20世紀にかけてイギリスのフェミニズム運動の中核を構成してきたミドルクラス女性たちの救済理念を、救済対象とされた三つの周縁的な立場の女性たちの思いと対照させながら検討した。それによって、「フェミニズム」が一つの理念として女性たちに共有されていなかったことが明らかになっただけでなく、ミドルクラスの女性たちにも、それとは異なる環境に置かれていた女性たちにも、それぞれに生きるために環境をただ甘受していたのではなく、自分たち自身の手で生をコントロールする道を模索していたことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナのために海外資料調査などはできなかったが、オンライン資料の活用やオンラインでの研究打ち合わせなどを積極的に活用することで、本プロジェクトを開始した時に予定していた、2020年度の西洋史学会大会でのシンポジウムを行うことができた。
オンライン資料の公開が急速に進展したタイミングでもあったため、当初は現地でしか閲覧できないと思われた資料などをオンライン上で閲覧することができた。ただし、詳細を確認するためには資料の現物を確認することも必要であった。
確認すべき資料を海外調査に入る前にかなり正確に把握できたため、海外資料調査を再開できた2022年からはかなり効率的な資料調査を行うことができたといえる。
また、西洋史学会の大会が当初予定の6月から12月に延期されたため、シンポジウムの打ち合わせを当初予定よりも入念に行うことができた。結果として、シンポジウムにエントリーした際に想定していたよりも研究が進展した内容を含めたシンポジウム報告を行うことができた。
シンポジウム準備の過程でメンバーの研究内容を相互に確認し、方向性を協議しながら研究を進めることができたこともこの年度の研究の大きな成果であるといえる。

今後の研究の推進方策

2020年度の研究としては、イギリスのミドルクラス女性たちの提唱したフェミニズムの内容および、彼女たちが救済対象とした女性たちのニーズのズレが、19世紀の本国、植民地、20世紀のイギリス本国それぞれで確認された。
2021年度以降は、このズレが家族観にどのように反映されていたのか、また、そうした家族観のズレがどのような状況で生まれたのかを検証していく。
19世紀中ごろからイギリスにおいて本格的に始動するフェミニズムは、イギリスのミドルクラス的な観念を基盤としているが、それはヴィクトリア朝の女性観や女性が守るべきものとしていた家族観があると考えられる。そうした本国のフェミニズムが克服しようとした観念や制度は、それとは異なる家族の形を基盤とする周縁的女性たちにとって、どのような意味を持つものであったのかを考えたい。
具体的には、ヴィクトリア期から頻繁に見られた親子が離れて暮らす状況について、19世紀の奴隷および解放された人びとのクラス西インド、イギリス本国の労働者階級、および20世紀の本国への移民たちの事例を取り上げ、ヴィクトリア的家族観とは異なる状況がそれぞれどのような状況で生まれたのか、またそれが当事者にはどのように受け止められていたのかなどについて検討していきたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 書評 Tamara S. Wagner, The Victorian Baby in Print : Infancy, Infant Care, and Nineteenth-Century Popular Culture2021

    • 著者名/発表者名
      吉村(森本)真美
    • 雑誌名

      『ヴィクトリア朝文化研究』

      巻: 19 ページ: 278-282

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「書評と紹介:武田尚子著『戦争と福祉 : 第一次大戦期のイギリス軍需工場と女性労働』」2021

    • 著者名/発表者名
      奥田伸子
    • 雑誌名

      『大原社会問題研究所雑誌』

      巻: 748 ページ: 96-100

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「十九世紀イギリスの刑務所改革と囚人労働 ―『不自由な労働力』の視点から」2020

    • 著者名/発表者名
      吉村(森本)真美
    • 雑誌名

      『神女大史学』

      巻: 37 ページ: 1-25

  • [学会発表] 周縁からのフェミニズムの再検討-イギリス女性たちに見るOur Storyとour storiesのはざま、「女性たちの「生」を可視化する―ジェンダーから見るイギリス帝国―」2020

    • 著者名/発表者名
      並河葉子
    • 学会等名
      日本西洋史学会第70回大会
  • [学会発表] 「19世紀イギリスの子ども支援チャリティと女性たち」2020

    • 著者名/発表者名
      森本真美
    • 学会等名
      日本西洋史学会第70回大会
  • [学会発表] 「ブリテン女性と北アイルランド紛争――レイシズム・フェミニズム・ホワイトネス」」2020

    • 著者名/発表者名
      奥田伸子
    • 学会等名
      日本西洋史学会第70回大会

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公開日: 2023-12-25  

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