研究課題/領域番号 |
18H00707
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
渡辺 浩一 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (00201179)
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研究分担者 |
石神 裕之 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10458929)
堀地 明 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (70336949)
岩淵 令治 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (90300681)
澤井 一彰 関西大学, 文学部, 教授 (80635855)
菅原 未宇 東海大学, 文学部, 准教授 (10645310)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近世 / 災害 / 環境 / 都市 / 洪水 / 火災 |
研究実績の概要 |
4月23日にブダペストにおいて打ち合わせを行った。ハンガリー国立アカデミーのチャバ・カトーナ上級研究員を中心に2022年度にブダペストにおいてシンポジウムを開催することを合意した。 5月17日に、昨年度に応募していたEAUH2020Antwerp(第10回欧州都市史学会、2020年9月開催予定)のmain session“Perceptions of Disasters in Early Modern Cities”が採択されたとの連絡を受けた。これに伴い、研究発表の公募や発表依頼を行い、12月に発表者を確定した。 9月6~9日に北京の災害史関係調査を行った。紫禁城内の浸水場所や永定河の決壊箇所の確認を行ったほか、消防組織が存在した街区も踏査した。 1月16日に国際研究会「近世都市の災害と自然環境」を国文学研究資料館で行った。参加者は約30名。研究発表は、岩淵令治「江戸における都市民の防火意識」、デイビッド・ガリオック(モナシュ大学)「ヨーロッパの都市における火災:1600-1800年」、渡辺浩一「1742年江戸大水害と奥多摩渓谷」であった。それに加え、堀地明が北京について、澤井一彰がイスタンブルについて、ロレンツァ・ジャンフランチェスコ(チチェスター大学)が全体についてそれぞれコメントした。 2月13日に国内研究会を国文学研究資料館で行った。内容はEAUH2020Antwerpの準備報告であった。なお、この学会は新型コロナウィルス感染症パンデミックのため2021年9月に延期された。 3月に国内史料調査を予定していたが新型コロナウィルス感染症の影響で中止とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年4月のブダペストでの打ち合わせでは、ハンガリー側の意欲が高く、英語図書の刊行まで話題となった。 2019年9月の北京フィールドワークでは、中国史以外のメンバーが、北京が持つ人為的自然条件を理解することができ、北京の災害研究を理解する基礎を築くことができた。 2020年1月の国際研究会では、フランスの交通ストのためチャバ・カトーナ氏が来日できなくなり、報告「1838年におけるブダペスト大水害」を欠くことになった。しかし、ガリオック報告では気候との関連で思考していることがよくわかり、テーマに「自然環境」という語を入れたことと即応した。ジャンフランチェスコのコメントも含めて、日本側の歴史研究にもっと自然環境の要素を組み込む余地が大きく存在することが確認できた。 同年2月にチャバ氏を再招聘したが、今度は新型コロナウィルス感染症のために来日中止となり、結局同氏の訪日は実現しなかった。現在はブダペストでのシンポジウムの開催に向けて連絡を取り合っているところであるが、パンデミックの収束が見込めないなか、日程の設定には至っていない。 研究代表者が江戸のコレラも含む安政期連続複合災害の研究に着手したのちに、日本でコロナの流行が始まった。過去の感染症研究の進展に伴って、現実の感染症が広がることとなり、現代と幕末を対比的にとらえることができる現実の環境が現在も続いている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は災害史研究に自然環境の要素をより大きく組み込むことが課題となる。ブダペストのシンポジウムにおいても災害史研究の枠にとどまらない環境史的な議論ができるように準備したい。特に報告のなかにパンデミックを入れることとする。より具体的には、研究代表者渡辺が安政コレラの研究を既に行っている。アントワープの学会セッションは災害意識がテーマであり、著しく異なる自然環境のなかでどのような災害に対する意識が生まれるのかという課題に少しでも接近できるセッションを目指したい。 2020年9月に予定されていたEAUH2020Wntwerp(欧州都市史会議)は2021年9月に延期となった。採択されたセッションとそのセッションでの報告はそのまま維持される。そのため、2021年度に計画していたブダペストのシンポジウムを2020年度(2021年3月)に実施する準備を始めることで先方と合意した。しかし、2021年3月時点で新型コロナウィルス感染症流行がどのような状態になっているのかは全く予測不可能であるため、その時点で実施できない場合は、2022年度に延期することを考えている。 2021年度は冬季は感染症流行の恐れがあり、夏はオリンピック・パラリンピックがあって(これも中止になるのかもしれず)、国際的活動は日程調整が難しい。計画は全て暫定的なものにならざるをえない。計画を固定的に考えずに状況に応じて柔軟に対応する方針である。リモートでの国際会議開催も視野に入れている。 国内史料調査は北陸地域の調査を実現したいと考えている。
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