これまで進めてきた律令制の日唐比較研究を、平安時代まで視野に入れて、広い意味で中国文明の受容として書物や文化も含めて日本文化における中国の意義を明らかにした。社会的な発信としては、研究代表者が岩波新書『律令国家と隋唐文明』を出版し、多くの読者に読まれた。そこでは、律令法が従来いわれるような隋唐の制度の直輸入でなく、日本古代の固有な国制を制度化した側面が強く、奈良時代中期から平安時代初めに、礼制など中国文明の受容が進み、律令国家の新たな段階を迎えることを示した。このことは天皇制についても同様で、天皇制の成立と中国化について新たな見方を提示した。
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