研究課題/領域番号 |
18H00710
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
長谷川 裕子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (20635122)
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研究分担者 |
橋村 修 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00414037)
渡辺 尚志 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10192816)
春田 直紀 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80295112)
市川 秀之 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80433241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本中世史 / 日本近世史 / 地域史 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本中世・近世において複合的な生業を有する海村の特質と、それに伴う近隣村や都市との交易・交流・負担の実像を若狭湾沿岸海村を素材に解明することを目的とし、①若狭湾沿岸の諸海村における生業および村内秩序の特質、②近隣村との生業をめぐる交流と軋轢、およびその要因の一つとなる海村の負担の実像、③各海村と他地域、および都市との交易・交通の様相について、現地における調査・研究を実施している。具体的な作業としては、若狭湾沿岸海村に現存する中世から近世前期の古文書の悉皆調査と、古文書の情報をもとに現地における地理学的・民俗学的な聞き取り調査を実施することにあるが、コロナ禍の影響により後者については実施が困難であったため、本年度は前者の古文書調査と撮影古文書の目録作成の実施に注力した。 本年度に実施した研究は、①若狭・越前地域に現存する古文書の調査・撮影、②撮影した古文書の目録および絵図のトレース図の作成である。①については、2020年9月に「金瘡書」(越前市中央図書館所蔵)・「大音家文書」(若狭歴史博物館寄託)・「大聖寺文書」(高浜町)、2021年3月に「発心寺文書」・「龍泉寺文書」・「河野文書」・「安倍文書」・「明通寺文書」(以上、若狭歴史博物館寄託)・「若狭歴史博物館所蔵文書」・大橋文書(小浜市)・「劔神社文書」・「桃井文書」(以上、織田歴史館寄託)、2022年3月に「萬徳寺文書」(小浜市)・「渡辺文書」(若狭歴史博物館寄託)・「西福寺文書」(小浜市立図書館寄託)・「組屋文書」・「桑村文書」(以上、若狭歴史博物館所蔵)・「松平文庫(寄合物)」(福井県文書館所蔵)・「福井県立歴史博物館所蔵文書」・「西野文書」(福井県立歴史博物館所蔵)の調査・撮影を実施した。②については、南越前町・小浜市・若狭町において撮影した古文書の目録と、美浜町・小浜市の絵図のトレース図の作成を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、若狭湾のほぼ中心に位置する田烏浦・志積浦・矢代浦・仏谷浦(いずれも福井県小浜市)において現地調査を実施しする予定であったが、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、県外から研究者を招聘し、個人宅への訪問を含む現地における聞き取り調査、フィールドワークを実施することが困難であったため、いずれの地域においても実現が叶わなかった。田烏浦・志積浦・矢代浦については、若狭湾沿岸から外海につながる良好な漁場を有する漁村であり、漁業をめぐる相論が多発していた地域であることから、これらを参照しながら生業のあり方や地形・地名の復元を試み、同時に、現地における聞き取り調査により、民俗行事や習俗・慣習、村組織、他村との交易・交流のあり方を復元していく作業が次年度の研究課題として残されることとなった。また、仏谷浦は若狭湾のなかでもいわゆる内海に面した養殖が盛んな地域であることから、田烏・志積・矢代との違いを比較する上で適した素材であるが、こちらについても現地調査とともに、個人宅に伝来している古文書の調査・撮影も実施できなかったため、これらの作業も次年度の研究課題として繰り越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究課題は、本研究で現地調査を実施する予定としていたが、実際にはコロナ禍で実現が出来ていなかった小浜市から高浜町の海村の現地調査・フィールドワークを実施し、海村の諸生業や地域の交流・交易の実像を解明することである。本研究の中核が、現地調査の実施にあるため、コロナ禍においてなかなか研究が進められない状況にあったが、今後はコロナウィルス感染症の状況をみながら、小浜市・高浜町周辺の現地調査を夏と秋に実施する予定である。同時に、これまでの研究で調査を実施した美浜町・南越前町についても、研究成果をまとめるために必要となる補充調査を実施する予定である。 また、古文書調査については、コロナ禍においては公共施設や寺院以外では実施が困難であったが、実際には海村の個人宅に現存する古文書も多く残されている。個人宅に伝わる古文書は散逸の恐れもあるため、調査・撮影は急務である。今後は、個人宅への調査も徐々に進めていく予定である。さらに、研究の成果を広く公表するために、撮影した古文書の目録作成と地図のトレース図の作成を並行して実施し、研究成果を公表するためのホームページを設置して公表するための準備を進めていくつもりである。
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