研究課題/領域番号 |
18H00722
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高嶋 航 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303900)
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研究分担者 |
藤田 大誠 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (20407175)
中嶋 哲也 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30613921)
金 誠 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40453245)
束原 文郎 京都先端科学大学, 健康医療学部, 准教授 (50453246)
浜田 幸絵 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (50636769)
佐々木 浩雄 龍谷大学, 文学部, 准教授 (80434348)
新 雅史 流通科学大学, 商学部, 講師 (90750513)
菅野 敦志 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (70367142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 帝国日本 / 満洲 / スポーツ |
研究実績の概要 |
本研究は帝国日本のスポーツを解明することを目的とするが、先行研究でもほとんど触れられない満洲の状況を理解することに重点を置いている。 本年度の主たる事業は『帝国日本と越境するアスリート』の出版である。本書は帝国日本の視点からスポーツをみることの意義と面白さを一般向けに発信できないかという問題意識から誕生したもので、帝国日本を包括する、スポーツを通じたネットワークの形成とその変遷を、アスリートの移動を辿ることで描きだした。高嶋と金が編者となり、本科研メンバー全員で執筆した。初校は前年度末に完成していたが、本年度の前半を通して推敲を重ね、12月に塙書房より刊行した。 本年はもともと東京オリンピック開催の年であり、スポーツに関わるイベントも数多く予定されていた。ふだんスポーツをとりあげないような学会でも、東京オリンピックの機会にスポーツをテーマとするシンポジウムを計画しており、本科研のメンバーもそうした場で帝国日本のスポーツに関わる発表を積極的に行おうとしていた。しかしそうした学会の多くは、新型コロナウイルスのため中止や延期となってしまった。そんななか、東アジア近代史学会のシンポジウム「スポーツと東アジア―国家/帝国、国民/民衆―」は登壇者4名のうち3名が本科研メンバーであり、当該テーマで本科研が果たしつつある役割を伝えることができたと思っている。 本科研も、今年度はすべてオンラインで研究会を開催した。オンラインは気軽に開催できるとあって、5月、6月、8月、9月、12月、3月と6回研究会を開いた。前半は『帝国日本と越境するアスリート』に関する打合せや研究発表が多く、後半は本科研の成果報告書となる論文集刊行に向けた研究発表が中心だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最重要課題であった『帝国日本と越境するアスリート』の刊行をぶじ終えることができた。東京オリンピック開催が予定されていた年であり、スポーツに対する関心が高まることを見越して、本科研にも関心を持ってもらおうと企画したもので、結果的にオリンピックが延期となり、肩透かしをくらった感があるものの、科研の成果を一般に発信できたという点で意義はあったと思う。 新型コロナウィルスの影響が予想以上に長引き、海外での活動のみならず、国内での活動も大きく制限されることになったのは誤算だった。さいわい、本科研に関わる資料の収集整理は前年度までにおおよそ済ませていたので、研究の進行を大きく妨げるには至らなかった。 本年は研究会をすべてオンラインに切り替えた。日程の調整がつけやすかったことから、例年よりも多く開催することができた。このうち、8月は東京オリンピックマラソン競技の観察も兼ねて札幌での研究会を予定していたが、これがオンライン開催となったのは残念であった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はメンバーそれぞれが論文のテーマを決定し、論文集作成にむけて研究を進めていく。本科研は帝国日本全体を対象とするものだが、これまで研究がなされていない満洲のスポーツについて重点を置くことになるだろう。できれば、満洲のスポーツで一冊、帝国日本のスポーツで一冊、あわせて二冊の論文集が刊行したいが、まずは満洲のスポーツに注力したい。その場合でも、満洲のローカルヒストリーとして描くのではなく、満洲に焦点をあてながら、帝国日本全体を浮かび上がらせるような叙述をしてみたい。 また、論文集作成の一環として、シンポジウムを開催し、歴史学、社会学、スポーツ科学などさまざまな分野の研究者からフィードバックをえようと考えている。できれば対面で開催したいが、無理であればオンラインで開催することになるだろう。 国外での資料収集も引き続き実施したいが、新型コロナウイルスの状況次第で、断念せざるをえないこともあると考えている。その場合は、現在収集している資料で遂行可能なテーマを設定するほかない。本科研が終了する2022年度までに、新型コロナウイルスの状況が改善されれば、国外で資料収集をしたい。2022年度にずれ込んだ場合、論文集に直接いかすことができないかもしれないが、2023年度以降、本科研を継続・発展させる形で共同研究を進めるつもりであり、けっして無駄にはならないと考えている。
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