研究課題/領域番号 |
18H00725
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
阿部 幸信 中央大学, 文学部, 教授 (60346731)
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研究分担者 |
小林 聡 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40234819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 車駕 / 衣服 / 唐宋 / 官僚制 / 礼制 |
研究実績の概要 |
本年度の研究活動の中心となったのは、遺物調査と情報収集である。8月、阿部・小林両名で山西省を訪れ、太原(山西博物院、中国煤炭博物館壁画館)・平遥(双林寺、鎮国寺)・臨汾(広勝寺)において墓葬・寺院壁画や各種遺物を実見したほか、山西大学歴史文化学院の諸氏と面会して情報交換を行った。2月、阿部が単独で西安を訪れ、近郊の唐代壁画墓および陝西歴史博物館地下収蔵庫に所蔵されている唐代墓葬壁画の現物などを実見し、また碑林博物館・西北大学・陝西師範大学において学術講演を行うかたわら、今後の調査実施に向けた情報提供を受けた。3月には阿部がデンバーで開催されたアメリカアジア学会(AAS)およびそれに合わせて行われたアメリカ中国中古史学会に出席し、南北朝~唐宋期の美術や制度に関する最先端の研究成果に触れるとともに、今後の研究成果発信の方策について多くのヒントを得た。以上のほか、中国・韓国・欧米の多くの研究者との交流をとおして、本研究の進めかたについて多大な示唆を受けたことを特記しておく。 初年度である今年度は、唐宋期に関する研究成果の公表は計画に掲げていなかったものの、そのベースとなる魏晋南北朝期関連の成果発信には積極的に取り組んだ。小林は8月に南開大学歴史学院他主催の「中古服儀制度与政治空間」ワークショップに出席して「漢唐間における楽制体系と冠服制度」と題する報告を行い、阿部も1月にルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン中国学研究所にて学術講演“Die kaiserlichen Siegel im fruehen mittelalterlichen China(中国中古の皇帝璽について)”を、2月に西北大学歴史学院にて学術講演「漢晋間綬制的変遷」(既発表論考を改訂)を行った。 上記のほか、本研究の基礎をなす車服制度表の作成については、計画どおり、唐代に関する部分を中心に作業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表作成に関して、目標とした唐代部分の「完成」には達しなかったが、大きな遅れは生じていない。 調査について、太原市内はこの夏以降、市を挙げての改修工事中であり、主要な史跡はほとんど閉鎖あるいは通行止めとなり、予定したすべての遺物を実見することはできなかった。同様に、臨汾博物館も移転改修中で、所蔵品の実見は叶わなかった。その分、太原以外の山西省各地においては予定以上に多くの文物を実見できたが、寺院については写真撮影不可のところが多く、目視による記録にとどまった。太原・臨汾については、一連の工事が終わる令和2年度以降を目処に、必要に応じて再訪する予定である。また、銀川での調査は、日程的問題から実施できなかった。こうした予想外の問題はあったものの、当面確認の必要なものはほとんど実見することができたので、研究全体の進行に大きな支障は出ていない。 成果公表について、刊行論文がなかったのは計画に沿ったことである。他方、いくつかの口頭報告・学術講演をとおして成果を国際的に発信できたこと、令和元年度内に刊行される論考を準備できたことなど、計画を上回る進展があった。 上記を総合的に勘案して、研究全体はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の本格的な成果公表は第3年度(令和2年度)以降に予定されており、それまでは計画に沿って粛々とデータの収集・整理に励むことが目指される。現時点で大きな支障は生じておらず、今後も現状を維持していくことにしたい。 なお、本年度の研究活動をとおして、国外の複数の研究者・研究機関より、今後の研究遂行への協力の約束を得ることができた。現時点で具体的な名前を挙げることは差し控えるが、今後研究を推進していくうえで、大きな力になるものと期待している。
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