研究実績の概要 |
2022年度は最終年度であり、もともと現地調査の予定はなかったが、研究成果の公表を海外で行う計画があった。また、2020年度・2021年度から積み残されていた調査の実現も課題であった。しかし、中国では本研究期間終了直前の2023年1月まで難しい状況が続き、制限解除も突然であったため、調整や手配が間に合わず、研究期間内に渡航することはかなわなかった。 このため、申請当時の計画に沿った形での研究成果公表は、研究代表者の阿部による国内での口頭報告「漢明間の王権観の変化について」のみにとどまったが、その代わりとして、補助的に進めてきた隋唐時代の制度の形成過程に焦点を当てた研究の成果を積極的に公表した。6月にはJSPS外国人招へい研究者(短期)のXurong Kong氏(受入研究者は阿部)を交える形で、中央大学人文科学研究所において公開講演会を実施し、研究分担者の小林が登壇して「漢唐間における国家と音楽」を報告した。小林はこのほかに2つの口頭報告「漢晋間における服制の展開」「グローバル=ヒストリーの手法による「新しい歴史の捉え方」」を行い、前者をベースとした「漢晋間における公的服飾制度の展開」が『ACTA ASIATICA』125に掲載されることもすでに決まっている。阿部は“Elaboration, or cultural tradition?: Change of Seal Knobs in the Northern and Southern Dynasties”において、南北朝期における公印の鈕式の変化とその技術的要因を論じるにとどまらず、本研究課題の本来の方向性を意識して、唐宋時代の公印の製造・利用法と官制との関係についても言及した。さらにこの方面の考察を深め、2023年に国際学会において続篇を報告することがすでに決まっている。
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