研究課題/領域番号 |
18H00728
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野澤 透 京都大学, 文学研究科, 教授 (90271832)
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研究分担者 |
倉科 一希 広島市立大学, 国際学部, 教授 (00404856)
中嶋 啓雄 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (30294169)
青野 利彦 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40507993)
三牧 聖子 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (60579019)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジョン・フォスター・ダレス / アメリカ / 外交 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
「進捗状況」の項に記したとおり、2021年度および繰越を行った2022年度を通じて、本プロジェクトの進捗は思わしくない。その中で、各メンバーは、最終的に本プロジェクトの成果につながるような個別研究を地道に積み重ねている。 小野沢の共著『入門講義 戦後国際政治史』は、概説書ではあるが、第二次世界大戦後の国際関係をいくつかの時期区分に従って地域ごとに追っていくという、類書にはない構成を取る。小野沢が担当した中東に関する各節は、中東域内のいわば内在的・自生的な秩序生成のダイナミクスとアメリカを中心とする域外大国の関与を組み合わせて論じ、本プロジェクトのテーマである、「アメリカの覇権的秩序」という見方に代わる「地域」の創出のありようを提示した。中嶋が編著者を務め三牧が寄稿した英語論集は、アジア太平洋地域における地域的秩序の形成について、帝国間対立を基調とする国家間関係を踏まえつつ、トランスナショナルな組織や人的興隆の側面から考察したものであり、「覇権的秩序」とは全く異なる地域的秩序のひとつのレイヤーを描き出した成果である。中嶋の論文および学会発表は、同様の観点から日本側の個別的な事例について検討したものである。三牧の論文および学会発表にも、これと重なる部分があるが、それに加えて国際関係における法の支配や戦争違法化に代表される20世紀前半のアメリカに発祥する国際主義の展開を21世紀まで視野に入れて考察したものが多く含まれる。本プロジェクトは、ジョン・F・ダレスをアメリカ的国際主義とアメリカの覇権の結節点と措定するが、そのような観点につながっていく研究業績と評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本プロジェクトの進捗状況は思わしくない。その最大の理由はコロナ禍の継続である。2021年度には、前年度よりも若干の緩和があったとはいえ、渡航制限や海外の文書館・図書館などの研究施設の閉鎖や利用制限が基本的に継続していたため、本プロジェクトの眼目である米国を中心とする海外の文書館・図書館での一次史料の収集は事実上不可能な状況であった。その結果、2021年度の研究費も相当部分を2022年度に繰り越すこととなった。 2022年度には渡航制限や海外の研究施設の利用制限が段階的に緩和された。とはいえ、コロナ感染症の感染者数は国内外で相当数に及んでおり、本プロジェクトのメンバーの周囲でも、海外に渡航した研究者が感染した事例は多数存在した。前年度の「今後の研究の推進方針」に記したように、「本人の健康上の理由のみならず家族構成その他の事情により、たとえ軽症化する傾向にあったとしてもコロナ感染症に感染することを最大限避けるべき合理的な事由がありうる」との観点から、本プロジェクトでは、メンバーによる海外調査を積極的に推奨しなかった。その結果、2021-2022年度にも海外調査は実施されなかった。 本プロジェクトとしては、コロナ感染症にかかわる状況が改善することに期待して、2021年度の研究費の2023年度への再繰越を申請を試みたものの、再繰越のガイドラインをクリアできないとの判断を示されたため、申請を断念し、結果的に2021年度の多くの研究費を返納することとなった。これは想定していなかった事態であり、本プロジェクトの最終的な成果にも影響を及ぼさざるを得ないであろう。
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今後の研究の推進方策 |
いったん繰り越した研究費の少なからぬ部分を返納せざるを得なかったことのダメージは大きい。しかしながら、本プロジェクトとしては、「本人の健康上の理由のみならず家族構成その他の事情により、たとえ軽症化する傾向にあったとしてもコロナ感染症に感染することを最大限避けるべき合理的な事由がありうる」との考え方は誤りではないと考えている。それゆえ、ひきつづきこの考え方に立って、各メンバーが健康上の安全を確保できると実質的に確信できるようになり、メンバー自身が海外調査を希望するまで、海外調査を積極的に推奨することはしない。 結果的に、海外での史料調査を主軸とする当初の研究計画は大幅に変更せざるを得ないであろう。手持ちの史料や、(相対的に少ないものの)国内で使用できる資・史料を最大限活用する形で、残された研究費を有効に使いながら、可能な限り研究課題に取り組むこととしたい。 また、本プロジェクトは、期間終了時までに論文集等の成果物を刊行することを目標とせず、期間終了後に息の長い研究活動を継続し、その中でプロジェクト全体としての成果物を発表することを目指したい。残る研究期間は、そのための基盤作りに活用する予定である。
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